夏目漱石 『明暗』 [Gemini]
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夏目漱石 『明暗』
「もし結核性のものだとすると、たとい今おっ…
「そんな所に立って何をしているんだ」…
「ちょっと今のうち一風呂浴びていらっしゃい…
「もし手術をするとすれば、また日曜でなくっ…
「嘘よ。あたし芝居なんか行かなくってもいい…
「じゃどうしても御勤めを一週間ばかり休まな…
「あなた、あなた」…
「藤井の叔父に金があると、あすこへ行くんだ…
「御前自分の着物かなんか質に入れた事がある…
「まだ嬉しいんでしょう」…
「奥さんはずいぶん意地が悪いですね」…
「御気に障ったら堪忍してちょうだい。そう云…
「いつだって構やしないんでしょう。繰合せさ…
「また子供のように泣いたり唸ったりしちゃい…
「あてて見ましょうか」…
「その時はその時の事だ」…
「佐々木には断ったろうね」…
「二階は真暗じゃないか」…
「とうとう明日か明後日やって貰う事にきめて…
「こりゃいけない」…
「あの蟇口の中にゃ少しっきゃ入っていないん…
「今学校の帰りか」…
「どうだ諸君こうやって出そうとすれば、何個…
「うん買ってやるさ」…
「真事、そりゃ好い靴だよ、お前」…
「雀ならいいが、むやみに人を狙っちゃいけな…
「御前近頃岡本の所へ遊びに行くかい」…
「真事なぜお父さんに訊いて見なかったのだい…
「お金さん由雄さんによく頼んでおおきなさい…
「お金さんの縁談の事もあるんだからね。ここ…
「由雄さん」…
「ええ少し贅沢です」…
「由雄さん久しぶりだから御飯を食べておいで…
「お金さんはその人を知ってるんですか」…
「何もお金さんの場合をとやかく批評する気は…
「実を云うとその訳を今日までまだ誰にも話し…
「真事、意があるってえのはね。――つまりそ…
「そう怒ったって仕方がない。そこに事実があ…
「お延はどうしたい。行こう行こうと思いなが…
「そう信用がなくなった日にゃ僕もそれまでだ…
「君学校にいた時分作ったあの自慢の外套はど…
「なぜその背広といっしょに外套も拵えなかっ…
「ここはいやに陰気な所だね。どこかの大名華…
「君が奢るのか」…
「ここが好い。ここへ入ろう」…
「僕は君と違ってどうしても下等社界の方に同…
「あの眼つきを見ろ」…
「君は黙ってるが僕のいう事を信じないね。た…
「僕は君の腹の中をちゃんと知ってる。君は僕…
「こう苦しくっちゃ、いくら東京に辛防してい…
「朝鮮へはいつ頃行くんだね」…
「実を云うと、僕は行きたくもないんだがなあ…
「僕はやっぱり行くよ。どうしても行った方が…
「どうもすみません」…
「お前もいっしょに行くつもりだったのかい」…
「だってあなた今日は日曜よ」…
「これは置いて行くよ」…
「今仕度をしておりますから、少しの間どうぞ…
「じゃ止しましょう」…
「支度ができましたからどうぞ」…
「お薬はいただかなくっていいの」…
「今から宅へ帰ったって仕方がないだろう」…
「あなた、あなた」…
「断ったのよ」…
「あなたまだ何かあたしを疑ぐっていらっしゃ…
「行くのか、行かないのかい」…
「よく来られたのね。ことによると今日はむず…
「今日の予言はお神籤じゃないのよ。お神籤よ…
「いいわ、百合子さん。どうでも勝手になさい…
「なに何でもないんだよ。継がね、由雄さんは…
「百合子さん、眼が早いのね、いつ見つけたの…
「叔父さんはどうなすったの。今日はなぜいら…
「こうやって真ともに向けるんだから、敵わな…
「あらいらっしゃらないわ」…
「ああ行った方がいいよ。行っといでよ」…
「どうだ面白いかね。――由雄さんはどうだ。…
「実は今日お前を呼んだのはね、ただ芝居を見…
「いったいこれから何が始まるの」…
「三好さん、黙っていないで、ちっとあっちの…
「岡本さんあなたが外国から帰っていらしって…
「お互に年を取ったもんだね。不断はちっとも…
「君は相変らず旨そうに食うね。――奥さんこ…
「ありがとうございます。お蔭さまで」…
「泊って行くなら、泊っといでよ。遠慮は要ら…
「旦那様がいらっしゃらないと何だか変ね」…
「よく気をつけておくれよ。昨夕見たいに寝て…
「へえ」…
「おい何をぼんやりしているんだ。しきりに考…
「いったい由雄さんはそんなに厳格な人かね」…
「お前はああいう人が好きなのかね」…
「昨日の事は全体どういう意味なの」…
「あたしにだって解りっこないわ」…
「実はお前にお婿さんの眼利をして貰おうと思…
「人間はよく交際って見なければ実際解らない…
「それっきりかね」…
「いったい継子さんは何とおっしゃるの」…
「自分の結婚ですらこうだのに」…
「でも継子さんは仕合せね。あたし見たいに心…
「そんなに人が悪うがすかな」…
「何もそんなにまでして、あたしを苛めなくっ…
「お帰んなさい」…
「しかし来るかな」…
「継子さん、今日はあたしがお神籤を引いて上…
「じゃ延子さんどんな心配があるの。少し話し…
「そりゃ駄目よ。津田の時は自分の事だから、…
「好いわ、来ても。追い出されたんでなければ…
「本当よ、お姉さまはもうじきお嫁に行くのよ…
「お父さま彗星が出ると何か悪い事があるんで…
「そりゃお前落ちないさ」…
「つまり批評家って云うんだろうね、ああ云う…
「昔から陰陽和合っていうじゃありませんか」…
「へええ」…
「これは先刻お前を泣かした賠償金だ。約束だ…
「今日は早かったでしょう」…
「何しに来たんだろう」…
「今日は大変お早うございましたね」…
「御嬢さまはまだどこへもおきまりになりませ…
「女はどうしても器量が好くないと損ね。いく…
「大丈夫ですよ、くれるって云ったに違ないん…
「やッぱり細君の力には敵いませんね、どんな…
「駈落をなさるのなら、いっそ二人でなすった…
「しかしあなたのおっしゃる事は本当なんでし…
「いっこう気がつきませんね。あれでどこか変…
「あなたのお手際にです。津田君を手のうちに…
「奥さんは結婚前の津田君を御承知ないから、…
「奥さんあなたの知らない事がまだたくさんあ…
「奥さん津田君が変った例証として、是非あな…
「じゃあなたは私を厭がらせるために、わざわ…
「じゃあなたは人を厭がらせる事は、いくらで…
「ただいま。大変遅くなりました。電車で病院…
「どうせただ貰うんだからそう贅沢も云えませ…
「奥さん、人間はいくら変な着物を着て人から…
「余計な事です。あなたからそんな御注意を受…
「あなたは私の前で説明する義務があります」…
「どうか遊ばしましたか」…
「まだほかに何かおっしゃりゃしなかったかい…
「汚ならしい事」…
「なに今日だって、忙がしいところをわざわざ…
「そんなに痛くっちゃ困るのね。嫂さんはどう…
「お前は器量望みで貰われたのを、生涯自慢に…
「兄さんの困るのは自業自得だからしようがな…
「つまりお前は兄さんに対して同情がないと云…
「そうでないよ、なかなか」…
「兄さんはいったい嫂さんをどんな人だと思っ…
「大変な権幕だね。まるで詰問でも受けている…
「兄さん、あたしここに持っていますよ」…
「あげましょうか」…
「どうして兄さんはこの頃そんなに皮肉になっ…
「お秀、お前には解らないかも知れないがね、…
「兄さんのお腹の中には、あたしが京都へ告口…
「それでお前はこの事件の責任者はお延だと云…
「兄さんはついこの間まで小林さんなんかを、…
「解りましたよ、兄さん」…
「兄さん、妹は兄の人格に対して口を出す権利…
「秀子さんの方へもお父さまから何かお音信が…
「それで先刻から大変御機嫌が悪いのよ。もっ…
「ええ良人は強情よ」…
「始めから黙っていれば、それまでですけれど…
「嫂さんどうしましょう。せっかく兄さんがあ…
「兄さん」…
「兄さん取っといて下さい」…
「兄さん」…
「驚ろいた」…
「そりゃ厭なのよ。この上叔父さんにお金の事…
「やッぱり予定通りの日数は動かずにいるより…
「奥さんが来たろう」…
「うん」…
「ふん」…
「少し借りてやろうか」…
「君吉川と岡本とは親類かね」…
「君は仕合せな男だな」…
「おおかためちゃくちゃに僕の悪口でも云った…
「お秀さんはね君」…
「ただ訪問のために行っただけだろう。単に敬…
「君何か用があるのか」…
「君もよほど呑気だね。吉川の奥さんが今日こ…
「じゃ女の方から見たらどうでしょう。自分の…
「そりゃ秀子さんは大丈夫にきまってるわ。も…
「あら何を」…
「変ね。津田の事なんか、吉川の奥さんがお話…
「そう。じゃそれでもいいわ。延子さんはおお…
「延子さん、あなた今日ここへおいでになる前…
「堀さんは問題外よ。堀さんはどうでもいいと…
「いくら理想だってそりゃ駄目よ。その理想が…
「へえ、そうですか。平生あんまり御無沙汰を…
「昨日秀子さんが来たでしょう。ここへ」…
「どうですかしら」…
「秀子さんをさんざん苛めたって云うじゃあり…
「みんなって、お秀の事なんでしょう」…
「とにかくこれからよく気をつけます」…
「岡本さんでも、そんな評判があるんでしょう…
「私とあなただけの間の秘密にしておくから正…
「もし間違ったら御免遊ばせよ。あなたはみん…
「どうぞ御遠慮なく何でもみんな云って下さい…
「隠しちゃ駄目よ。あなたが隠すと後が云えな…
「私はあなたの同情者よ」…
「まあ云って見て下さい」…
「何をそんなにむずかしく考えてるんです。お…
「じゃ今どうしていらっしゃるか、御存知ない…
「あなたが自分で話した事はなくって」…
「たいていの見当はつきそうなものですがね」…
「なに構わないのよ。万一全く気がつかずにい…
「ただ未練未練って、雲を掴むような騒ぎをや…
「じゃ云いましょう」…
「あなたがあっと云ったんですか。清子さんが…
「男らしくするとは?――どうすれば男らしく…
「清子さんが今どこにいらっしゃるか、あなた…
「あなたは内心行きたがってるくせに、もじも…
「吉川の奥さんへ堀さんとおっしゃる方から電…
「私はまだ見習です」…
「もっと若い綺麗な人が、どんどん見舞に来て…
「君の国はどこかね」…
「お月さんだね、すると。お月さんは好い名だ…
「でも先刻手紙をお寄こしになったのね」…
「何にも書いてないから、その理由を伺うんで…
「小林なんかに逢うのはお前も厭だろうと思っ…
「また金を強乞りに来たんだ。ただそれだけさ…
「お前だって、あんな奴に会うのは厭なんじゃ…
「嘘よ、あなたのおっしゃる事はみんな嘘よ。…
「吉川の奥さんがいらしったじゃありませんか…
「そう、そんならそれでもいいわ。小林さんが…
「あたしがこれほどあなたの事ばかり考えてい…
「まさか温泉へ行く事をいうんじゃあるまいね…
「いくらあたしが、……わがままだって、………
「お秀なんぞが何を云ったって構わないじゃな…
「おおかたお前の体面に関わるような不始末で…
「思って下さらないたって。――いくら思おう…
「そんなくだくだしい事を云ってたって、お互…
「じゃいつごろその温泉へいらっしゃるの」…
「ね、行ってもいいんでしょう」…
「慰撫」…
「若い男は駄目だよ。時と二人ぎり置く訳にゃ…
「考えてない時には、どうするの。もしお婆さ…
「至極好い具合です。出血も口元だけです。内…
「これが癒り損なったらどうなるんでしょう」…
「やっと帰れる事になった訳かな。まあありが…
「何だか惜しいな、あいつにこれだけ取られる…
「お前は見かけに寄らない勇気のある女だね」…
「つまらないわね、女なんて。あたし何だって…
「どうだね、ここの宅は。ちょっと綺麗で心持…
「どうだ君ここの料理は」…
「そりゃ君のいう通りだ。だから僕は君に同情…
「やはり人間は境遇次第だね」…
「それでどうだ。僕は始終君に軽蔑される、君…
「第二にはだね。君の目下の境遇が、今僕の云…
「そこだ。そう来るところがこっちの思う壺な…
「やあちょうど好い。まだいる」…
「とうとう立っちまった。もう少し待ってると…
「例えばだね」…
「嘘だよ。実は嘘だよ。そう心配する事はない…
「いったいあの顛末はどうしたのかね。僕は詳…
「サンクス。僕は借りる気だが、君はくれるつ…
「何も好んで友達の夫婦仲を割くような悪戯を…
「原君は好い絵を描くよ、君。一枚買ってやり…
「どうぞお構いなく」…
「何を探しているんだ」…
「なに大丈夫だ。そのうちどうにかなるよ、心…
「君のいう意味なら、僕には全く無関係だろう…
「それより君の方でその主意を男らしく僕に説…
「なぜ取らないんだ、原君」…
「じゃ失敬、僕は停車場へ送って行かないよ」…
「お前は行かないでもいいよ」…
「あいにくなお天気で」…
「何たかが雨だあね。濡れると思やあ、何でも…
「ありがたい、大当りだ。だからやっぱり行こ…
「や、いけねえ、行き過ぎちゃった」…
「お客はたくさんいるかい」…
「昼間もこの通りかい」…
「一人で来る人は少ないだろうね、こんな所へ…
「ああ寒い」…
「どうしたんだ」…
「今晩は。大変お早うございますね」…
「君が勝さんてえのかい」…
「お早う、昨夜はお疲れさまで」…
「今日は別館の奥さんはどうかなすって」…
「浜のお客さんのいる所は、新らしい風呂場か…
「時にあの女の人はいったい何だね」…
「するとちょうど真中辺だね、ここは」…
「今朝風呂場へスリッパーを忘れていったもの…
「何しに来た」…
「御病気はいかがですか。これは吉川の奥さん…
「どうしたね」…
「銀杏返しかい、丸髷かい」…
「本当かい。迷惑じゃないかね。向へ行ってか…
「ああここだ」…
「この上だろう、関さんのお室は」…
「ついでに僕が関さんの室を嗅ぎ分けてやるか…
「道伴になったお爺さんに、もう少しで蜜柑を…
「相変らずあなたはいつでも苦がなさそうで結…
「ええありがとう。まあ相変らずです。時々二…
「昨夕は失礼しました」…
「迷児になって、行先が分らなくなりゃ仕方が…
「なければどこからその疑いが出て来たんです…
「それで僕の訊きたいのはですね――」…
「しかしあなたは今朝いつもの時間に起きなか…
「しかし考えるとおかしいわね、いったいどう…
「なんぼ僕だってただ吉川の奥さんの使に来た…
「あの浜のお客さまが、奥さまにお午から滝の…
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