夏目漱石 『明暗』 「つまらないわね、女なんて。あたし何だって…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』

現代語化

「つまんないわね、女なんて。私なんで女に生まれたんでしょう」
「それは私に言われても困るよ。京都にいるお父さんかお母さんに文句を言いに行くよりほかに、苦情を持ち込むところはないんだから」
「いいから、後で見ててよね」
「何を」
「何でもいいから、後で見ててよ」
「見てるけど、一体何だよ」
「それは実際に問題が起きなきゃ言えないわ」
「言えないっていうのはつまりお前にも分からないってことなんじゃないの」
「ええそうよ」
「何だくだらない。それじゃまるで雲を掴むような予言だ」
「でもその予言が後できっと当たるから見ててね」
「本当よ。なんか知らないけど、私最近ずっとそう思ってるの、いつか一度このお腹の中に持ってる勇気を、外に出さなきゃならない日が来るって」
「いつか一度? だからお前のは妄想と同じだよ」
「いいえ生涯のうちでいつか一度じゃないのよ。近いうちなの。もう少ししたらのいつか一度なの」
「ますます悪くなるだけだ。近いうちで蛮勇なんか亭主の前で発揮されたらたまらない」
「いいえ、あなたのためによ。だからさっきから言ってるじゃないの、夫のために出す勇気だって」

原文 (会話文抽出)

「つまらないわね、女なんて。あたし何だって女に生れて来たんでしょう」
「そりゃおれにかけ合ったって駄目だ。京都にいるお父さんかお母さんへ尻を持ち込むよりほかに、苦情の持ってきどころはないんだから」
「いいから、今に見ていらっしゃい」
「何を」
「何でもいいから、今に見ていらっしゃい」
「見ているが、いったい何だよ」
「そりゃ実際に問題が起って来なくっちゃ云えないわ」
「云えないのはつまりお前にも解らないという意味なんじゃないか」
「ええそうよ」
「何だ下らない。それじゃまるで雲を掴むような予言だ」
「ところがその予言が今にきっとあたるから見ていらっしゃいというのよ」
「本当よ。何だか知らないけれども、あたし近頃始終そう思ってるの、いつか一度このお肚の中にもってる勇気を、外へ出さなくっちゃならない日が来るに違ないって」
「いつか一度? だからお前のは妄想と同なじ事なんだよ」
「いいえ生涯のうちでいつか一度じゃないのよ。近いうちなの。もう少ししたらのいつか一度なの」
「ますます悪くなるだけだ。近き将来において蛮勇なんか亭主の前で発揮された日にゃ敵わない」
「いいえ、あなたのためによ。だから先刻から云ってるじゃないの、夫のために出す勇気だって」


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