夏目漱石 『明暗』 「あなたは私の前で説明する義務があります」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』

現代語化

「あなたは私に説明する義務があります」
「何を?」
「津田のことです。津田は私の夫です。妻の前で夫の人格を疑うようなことを、遠回しにでも言った以上、それをきちんと説明するのは、あなたの義務じゃないですか?」
「じゃなければそれを取り消すだけです。僕は義務とか責任とかって感じが薄い人間だから、あなたの言う通りに説明するのは難しいかもしれないけど、同時に恥を恥と思わない男として、一度言ったことを取り消すくらいは何でもないです。――じゃ津田君に対する失言を取り消します。そしてあなたに謝ります。そうすればいいでしょう?」
「ここで改めて言明します。津田君は立派な人格を備えた人です。紳士です。(もし世の中にそういう特別な階級があるなら)」
「僕はさっき奥さんに、人から笑われないように気をつけたほうがいいですよって注意しました。奥さんは僕の注意なんて聞く必要ないって言われました。それで僕もその後を話すのをやめました。よく考えたらこれも僕の失言でした。一緒に取り消します。他にも奥さんの気に障ったことがあったら、全部取り消します。全部僕の失言です」

原文 (会話文抽出)

「あなたは私の前で説明する義務があります」
「何をですか」
「津田の事をです。津田は私の夫です。妻の前で夫の人格を疑ぐるような言葉を、遠廻しにでも出した以上、それを綺麗に説明するのは、あなたの義務じゃありませんか」
「でなければそれを取消すだけの事でしょう。僕は義務だの責任だのって感じの少ない人間だから、あなたの要求通り説明するのは困難かも知れないけれども、同時に恥を恥と思わない男として、いったん云った事を取り消すぐらいは何でもありません。――じゃ津田君に対する失言を取消しましょう。そうしてあなたに詫まりましょう。そうしたらいいでしょう」
「ここに改めて言明します。津田君は立派な人格を具えた人です。紳士です。(もし社会にそういう特別な階級が存在するならば)」
「僕は先刻奥さんに、人から笑われないようによく気をおつけになったらよかろうという注意を与えました。奥さんは僕の注意などを受ける必要がないと云われました。それで僕もその後を話す事を遠慮しなければならなくなりました。考えるとこれも僕の失言でした。併せて取消します。その他もし奥さんの気に障った事があったら、総て取消します。みんな僕の失言です」


青空文庫現代語化 Home リスト