GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』
現代語化
「そうか、来ても良さそうなもんだがな。お前の旧友が朝鮮に行くんだぜ」
「朝鮮でも台湾でも勘弁だ」
「薄情な奴も大概だもの。そんなら立つ前にもう一度こっちから挨拶に行くよ、いいかい」
「もうたくさんだ、来ても来なくても」
「いや行く。じゃなきゃなんだか気が済まないから」
「勝手にするがいい。でも俺はいないよ、来ても。明日から旅行するんだから」
「旅行? どこへ」
「ちょっと静養が必要なんでね」
「転地か、お洒落だな」
「俺から言わせると、これも余裕の賜物だ。俺は君と違ってこの余裕に感謝しなきゃならねぇんだ」
「飽くまでも俺の忠告を無視してやるつもりなんだね」
「正直に言うと、まあそんなところだろうな」
「わかった、どっちが勝つかまあ見てろ。小林に啓発されるよりも、事実そのものに戒められる方が、よっぽど効果的でリアルでいいだろう」
原文 (会話文抽出)
「じゃ失敬、僕は停車場へ送って行かないよ」
「そうか、来たってよさそうなものだがね。君の旧友が朝鮮へ行くんだぜ」
「朝鮮でも台湾でも御免だ」
「情合のない事夥だしいものだ。そんなら立つ前にもう一遍こっちから暇乞に行くよ、いいかい」
「もうたくさんだ、来てくれなくっても」
「いや行く。でないと何だか気がすまないから」
「勝手にしろ。しかし僕はいないよ、来ても。明日から旅行するんだから」
「旅行? どこへ」
「少し静養の必要があるんでね」
「転地か、洒落てるな」
「僕に云わせると、これも余裕の賜物だ。僕は君と違って飽くまでもこの余裕に感謝しなければならないんだ」
「飽くまでも僕の注意を無意味にして見せるという気なんだね」
「正直のところを云えば、まあそこいらだろうよ」
「よろしい、どっちが勝つかまあ見ていろ。小林に啓発されるよりも、事実その物に戒飭される方が、遥かに覿面で切実でいいだろう」