夏目漱石 『明暗』 「今日は別館の奥さんはどうかなすって」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』

現代語化

「今日の別館の奥さんはどうしたんですかね」
「いえ、私は知りませんけど、なんか――」
「別にどうってことないんすけど、いつも朝風呂場で会うのに、今日はいなかったんですよ」
「へー、そうなんですか――。もしかしたらまだ寝てるのかも」
「そうかもしれませんね。でもいつも朝風呂に行く時間も決まってるんですってよ」
「へー、なるほど」
「それに今朝は一緒に裏山に散歩に行きましょうって約束したんすよ」
「じゃちょっと見に行きましょうか」
「いいえ、もういいんです。散歩はさっき済んじゃったんで。なんか具合でも悪いんじゃないかって心配になっちゃって、ちょっと番頭さんに聞いてみただけなんです」
「たぶんただの休みだろうと思いますけど、もしや――」
「もしやとか言わないでくださいよ。ただ聞いただけなんだから」

原文 (会話文抽出)

「今日は別館の奥さんはどうかなすって」
「いえ、手前はちっとも存じませんが、何か――」
「別に何って事もないんですけれどもね、いつでも朝風呂場でお目にかかるのに、今日はいらっしゃらなかったから」
「はあさようで――、ことによるとまだお休みかも知れません」
「そうかも知れないわね。だけどいつでも両方の時間がちゃんときまってるのよ、朝お風呂に行く時の」
「へえ、なるほど」
「それに今朝ごいっしょに裏の山へ散歩に参りましょうってお約束をしたもんですからね」
「じゃちょっと伺って参りましょう」
「いいえ、もういいのよ。散歩はこの通り済んじまったんだから。ただもしやどこかお加減でも悪いのじゃないかしらと思って、ちょっと番頭さんに訊いてみただけよ」
「多分ただのお休みだろうと思いますが、それとも――」
「それともなんて、そう真面目くさらなくってもいいのよ。ただ訊いてみただけなんだから」


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