夏目漱石 『明暗』 「僕は君の腹の中をちゃんと知ってる。君は僕…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』

現代語化

「俺はお前の腹の中が手にとるように分かる。俺はこんなに下層社会に同情しておきながら、自分自身は貧乏なくせに新しい服なんか作ったから、それを矛盾だって笑う気だろ」
「いくら貧乏だって、服を一着くらい作るのは当たり前だよ。作んなきゃ裸で外歩かなきゃいけなくなる。作っても別にいいだろ。誰も何も思わないよ」
「でもそうじゃない。お前は俺をただカッコつけてる奴だってからかうんだ。オシャレだって意味を取るんだ。それってダメだ」
「そうか。それは悪かった」
「いや俺も悪かった。悪かったよ。俺にもオシャレ心はあるよ。それは俺も十分認める。認めるけどさ、俺がなんで今回はこの服を作ったのか、その理由はお前知らねーだろ」

原文 (会話文抽出)

「僕は君の腹の中をちゃんと知ってる。君は僕がこれほど下層社会に同情しながら、自分自身貧乏な癖に、新らしい洋服なんか拵えたので、それを矛盾だと云って笑う気だろう」
「いくら貧乏だって、洋服の一着ぐらい拵えるのは当り前だよ。拵えなけりゃ赤裸で往来を歩かなければなるまい。拵えたって結構じゃないか。誰も何とも思ってやしないよ」
「ところがそうでない。君は僕をただめかすんだと思ってる。お洒落だと解釈している。それが悪い」
「そうか。そりゃ悪かった」
「いや僕も悪い。悪かった。僕にも洒落気はあるよ。そりゃ僕も充分認める。認めるには認めるが、僕がなぜ今度この洋服を作ったか、その訳を君は知るまい」


青空文庫現代語化 Home リスト