夏目漱石 『明暗』 「君は黙ってるが僕のいう事を信じないね。た…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』

現代語化

「お前黙ってるけど、俺の言ってること信じてないよな。確かに信じなさそうな顔してる。じゃ、俺が説明してやるよ。お前ロシアの小説読んだろ」
「ロシアの小説、特にドストエフスキーの小説を読んだ奴は絶対知ってるはずだ。どんだけ人間が身分が低かろうと、どんだけ教育を受けてなかろうと、時としてその人の口から、涙出るほどありがたい、それでいて飾り気のない、心から純粋で本物の感情が、泉のように湧き出してくることをさ。お前はあれを嘘だと思うか?」
「俺はドストエフスキー読んだことないから知らないよ」
「先生に聞くと、先生はあれは嘘だって言うんだ。あんなに崇高な気持ちをわざと下品な人間に持たせて、感傷的に読者を刺激する策略にすぎない、つまりドストエフスキーがウケたから、たくさんの真似をする奴が出てきて、むやみに安っぽくしてしまった一つの芸術的なテクニックにすぎないって言うんだ。でも俺はそうは思わない。先生からそんなこと聞くと腹が立つ。先生にはドストエフスキーが分かってないんだ。どんだけ年をとっても、先生は本の中でしか年を取ってないだけだ。どんだけ若くても俺は……」

原文 (会話文抽出)

「君は黙ってるが僕のいう事を信じないね。たしかに信じない顔つきをしている。そんなら僕が説明してやろう。君は露西亜の小説を読んだろう」
「露西亜の小説、ことにドストエヴスキの小説を読んだものは必ず知ってるはずだ。いかに人間が下賤であろうとも、またいかに無教育であろうとも、時としてその人の口から、涙がこぼれるほどありがたい、そうして少しも取り繕わない、至純至精の感情が、泉のように流れ出して来る事を誰でも知ってるはずだ。君はあれを虚偽と思うか」
「僕はドストエヴスキを読んだ事がないから知らないよ」
「先生に訊くと、先生はありゃ嘘だと云うんだ。あんな高尚な情操をわざと下劣な器に盛って、感傷的に読者を刺戟する策略に過ぎない、つまりドストエヴスキがあたったために、多くの模倣者が続出して、むやみに安っぽくしてしまった一種の芸術的技巧に過ぎないというんだ。しかし僕はそうは思わない。先生からそんな事を聞くと腹が立つ。先生にドストエヴスキは解らない。いくら年齢を取ったって、先生は書物の上で年齢を取っただけだ。いくら若かろうが僕は……」


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