GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』
現代語化
「ええ」
「全然変わってないですね」
「当たり前でしょ、同じ人よ」
「何笑ってんの」
「だって、奥さんのおっしゃること変なんですもん」
「なるほどね。確かにそうですね。生きてりゃ誰でも同じ人間で、生まれ変わらない限り別人にはなれないから」
「でも違うよ。生きてても生まれ変わる人はいっぱいいるでしょ」
「へえ、そうですか。そんな人がいたら、ちょっと会ってみたいもんです」
「会わせましょうか」
「いいですよ」
「またこれでしょう」
「旦那さんのこれにはかないませんよ。奥さんの部屋をちゃんと匂いで嗅ぎ分けるんですから」
「部屋だけじゃないよ。お前の年齢から出身地から、生まれ育ったところから、全部当てちゃうんだ。この鼻があれば」
「へえ、すごいですね。――もうかないません。旦那さんに会っちゃ」
原文 (会話文抽出)
「相変らずあなたはいつでも苦がなさそうで結構ですね」
「ええ」
「ちっとももとと変りませんね」
「ええ、だって同なじ人間ですもの」
「何を笑うんだ」
「でも、奥さんのおっしゃる事がおかしいんですもの」
「なるほど、そうに違いございませんね。生きてるうちはどなたも同なじ人間で、生れ変りでもしなければ、誰だって違った人間になれっこないんだから」
「ところがそうでないよ。生きてるくせに生れ変る人がいくらでもあるんだから」
「へえそうですかね、そんな人があったら、ちっとお目にかかりたいもんだけれども」
「お望みなら逢わせてやってもいいがね」
「どうぞ」
「またこれでしょう」
「旦那様のこれにはとても敵いません。奥さまのお部屋をちゃんと臭で嗅ぎ分ける方なんですから」
「部屋どころじゃないよ。お前の年齢から原籍から、生れ故郷から、何から何まであてるんだよ。この鼻一つあれば」
「へえ恐ろしいもんでございますね。――どうも敵わない、旦那様に会っちゃ」