夏目漱石 『明暗』 「どうだね、ここの宅は。ちょっと綺麗で心持…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』

現代語化

「どうだい、ここの家は。ちょっと綺麗でいい雰囲気じゃないか」
「うん。ここには探偵はいないみたいだね」
「その代わり美しい人がいるだろう」
「あの人たちはみんな芸者だよ」
「馬鹿言うな」
「いや、何とも言えないよ。どこにどんなものがあるか分からない世の中だから」
「だって芸者はあんな服装はしないよ」
「そうなのか。君がそう言うなら間違いないだろう。僕みたいな田舎者にはそもそもその区別がつかないんだから仕方ないよ。綺麗に着物さえ着ていればすぐ芸者だと思ってしまうんだからね」
「相変わらず皮肉を言うな」
「いや、皮肉ってるんじゃないよ。実際僕は貧乏なせいでそっちの方の目がまだ開いてないんだ。ただ正直にそう思うだけなんだ」
「それならそれでいいさ」
「よくなくても仕方ないけどさ。でも実際はどうなんだろう」
「何が」
「実際今の世の中、レデーと呼ばれる人たちと芸者の間って、そんなに区別があるのかい」

原文 (会話文抽出)

「どうだね、ここの宅は。ちょっと綺麗で心持が好いじゃないか」
「うん。ここには探偵はいないようだね」
「その代り美くしい人がいるだろう」
「ありゃみんな芸者なんか君」
「馬鹿云うな」
「いや何とも限らないからね。どこにどんなものがいるか分らない世の中だから」
「だって芸者はあんな服装をしやしないよ」
「そうか。君がそう云うなら確だろう。僕のような田舎ものには第一その区別が分らないんだから仕方がないよ。何でも綺麗な着物さえ着ていればすぐ芸者だと思っちまうんだからね」
「相変らず皮肉るな」
「いや皮肉るんじゃないよ。実際僕は貧乏の結果そっちの方の眼がまだ開いていないんだ。ただ正直にそう思うだけなんだ」
「そんならそれでいいさ」
「よくなくっても仕方がない訳だがね。しかし事実どうだろう君」
「何が」
「事実当世にいわゆるレデーなるものと芸者との間に、それほど区別があるのかね」


青空文庫現代語化 Home リスト