GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』
現代語化
「ここの料理も他の料理もたいてい似たようなもんだね。僕みたいな味覚が育ってないものには」
「まずいのかい」
「まずくないよ、うまいよ」
「それは良かった。亭主が自分で料理してるんだから、ほかよりは少しはましかもしれない」
「亭主がいくら腕を見せたって、僕みたいな口には合わないよ。泣くだけだもの」
「でもうまければそれでいいんだ」
「うん、うまければそれでいいんだけど。でもそのうまさが十銭均一の料理と同じだって言ったら亭主も泣くよ」
「一体今の僕には、フランス料理だからうまいだの、イギリス料理だからまずいだのって、そんな通を気取る余裕なんか全然ないんだ。ただ口に入るからうまいだけの話さ」
「でもそれじゃなんでうまいのか、理由が分からなくなるじゃないか」
「分かりきってるよ。ただおなかが減ってるからうまいだけさ。それ以外に理由なんてあるわけないでしょ」<ctrl99>
原文 (会話文抽出)
「どうだ君ここの料理は」
「ここの料理もどこの料理もたいてい似たもんだね。僕のような味覚の発達しないものには」
「不味いかい」
「不味かない、旨いよ」
「そりゃ好い案配だ。亭主が自分でクッキングをやるんだから、ほかよりゃ少しはましかも知れない」
「亭主がいくら腕を見せたって、僕のような口に合っちゃ敵わないよ。泣くだけだあね」
「だけど旨けりゃそれでいいんだ」
「うん旨けりゃそれでいい訳だ。しかしその旨さが十銭均一の一品料理と同なじ事だと云って聞かせたら亭主も泣くだろうじゃないか」
「いったい今の僕にゃ、仏蘭西料理だから旨いの、英吉利料理だから不味いのって、そんな通をふり廻す余裕なんかまるでないんだ。ただ口へ入るから旨いだけの事なんだ」
「だってそれじゃなぜ旨いんだか、理由が解らなくなるじゃないか」
「解り切ってるよ。ただ飢じいから旨いのさ。その他に理窟も糸瓜もあるもんかね」