GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』
現代語化
「だって、私はあの方の一軒お隣に座らされて、ろくにお顔も見なかったんですもの」
「予言者をそんな所に座らせるのは悪かったかもしれないけどさ。――何かありそうなものじゃないか、そんなありきたりな観察じゃなくて、もっとお前の特徴を生かして、一言で相手の本質をつくような……」
「難しいわね。――何しろ一度くらいじゃだめよ」
「でも一度だけで何か言わなきゃならない必要があるとしたらどうする？何か言えるでしょ」
「言えないわ」
「言えない？じゃあお前の直感は最近もう役に立たなくなったんだな」
「ええ、お嫁に行ってから、だんだん直感がすり減らされてきちゃったの。最近は直感じゃなくて鈍感だけよ」
原文 (会話文抽出)
「それっきりかね」
「だって、あたしあの方の一軒置いてお隣へ坐らせられて、ろくろくお顔も拝見しなかったんですもの」
「予言者をそんな所へ坐らせるのは悪かったかも知れないがね。――何かありそうなもんじゃないか、そんな平凡な観察でなしに、もっとお前の特色を発揮するような、ただ一言で、ずばりと向うの急所へあたるような……」
「むずかしいのね。――何しろ一度ぐらいじゃ駄目よ」
「しかし一度だけで何か云わなければならない必要があるとしたらどうだい。何か云えるだろう」
「云えないわ」
「云えない？ じゃお前の直覚は近頃もう役に立たなくなったんだね」
「ええ、お嫁に行ってから、だんだん直覚が擦り減らされてしまったの。近頃は直覚じゃなくって鈍覚だけよ」