夏目漱石 『明暗』 「考えてない時には、どうするの。もしお婆さ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』

現代語化

「考えてない時には、どうするの。もしお婆さんがいなければ、私はどうしても行っちゃダメなの」
「ダメとは言わないよ」
「だって、お婆さんなんているわけないじゃないですか。考えないでもそのくらいはわかりますわ。それより行ってダメならダメとはっきり言ってよ」
「そりゃいざとなれば留守居なんかどうでもいいさ。でも時を一人置いて行くにしても、まだ困ることがあるんだ。俺は吉川の奥さんから旅費をもらうんだからね。他の金を貰って夫婦連れで遊んで歩くように思われても、あんまりよくないじゃないか」
「それなら吉川の奥さんからいただかなくてもいいわ。あの小切手があるから」
「そうすると今月分の払いが困るよ」
「それは秀子さんが置いて行ったのがあるのよ」
「少し小林に貸してやらなきゃならないんだぜ」
「あんな人に」
「お前はあんな人っていうけど、あの人も今度遠い朝鮮へ行くんだから。可哀想だよ。それにもう約束してしまったんだから、どうすることもできないんだ」

原文 (会話文抽出)

「考えてない時には、どうするの。もしお婆さんがいなければ、あたしはどうしても行っちゃ悪いの」
「悪いとは云やしないよ」
「だってお婆さんなんかいる訳がないじゃありませんか。考えないだってそのくらいな事は解ってますわ。それより行って悪いなら悪いと判然云ってちょうだいよ」
「そりゃいざとなれば留守番なんかどうでも構わないさ。しかし時一人を置いて行くにしたところで、まだ困る事があるんだ。おれは吉川の奥さんから旅費を貰うんだからね。他の金を貰って夫婦連れで遊んで歩くように思われても、あんまりよくないじゃないか」
「そんなら吉川の奥さんからいただかないでも構わないわ。あの小切手があるから」
「そうすると今月分の払の方が差支えるよ」
「それは秀子さんの置いて行ったのがあるのよ」
「少し小林に貸してやらなくっちゃならないんだぜ」
「あんな人に」
「お前はあんな人にと云うがね、あれでも今度遠い朝鮮へ行くんだからね。可哀想だよ。それにもう約束してしまったんだから、どうする訳にも行かないんだ」


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