夏目漱石 『明暗』 「いくら理想だってそりゃ駄目よ。その理想が…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』

現代語化

「いくら理想だってそれは駄目よ。その理想が叶うときは、妻以外の女という女が全部女の資格を失わなきゃいけないんだから」
「でも完全な愛ってそこに行き着いて初めて味わえるでしょ。そこまで極まらなければ、本当の愛情なんて一生かかっても、感じるわけにいかないじゃない」
「それはどうだか知らないけど、あなた以外の女を女と思わないで、あなただけを世の中に存在するただ一人の女だって思うなんてことは、理性に訴えてできるはずがないでしょ」
「理屈はどうでもいいの、気持ちの上で、私だけをただ一人の女と思っていてくれれば、それでいいのよ」
「あなただけを女と思えって言うのね。それは分かるわ。でも他の女を女と思ってはいけないとなるとまるで自殺と同じよ。もし他の女を女と思わないくらいな夫なら、肝心のあなただって、やっぱり女とは思わないでしょ。自分の家の庭に咲いた花だけが本物で、世間にあるのは花じゃなくて枯れ草だって言うのと一緒よ」

「枯れ草でいいと思いますわ」
「あなたにはいいでしょう。でも男には枯れ草じゃないんだから仕方ないわ。それよりか好きな女が世の中にいっぱいいる中で、あなたが一番好かれている方が、お義姉さんにとってもかえって満足でしょ。それが本当に愛されてるって意味よ」
「私はどうせ絶対に愛されたいの。比べられるなんて最初から嫌なの」

原文 (会話文抽出)

「いくら理想だってそりゃ駄目よ。その理想が実現される時は、細君以外の女という女がまるで女の資格を失ってしまわなければならないんですもの」
「しかし完全の愛はそこへ行って始めて味わわれるでしょう。そこまで行き尽さなければ、本式の愛情は生涯経ったって、感ずる訳に行かないじゃありませんか」
「そりゃどうだか知らないけれども、あなた以外の女を女と思わないで、あなただけを世の中に存在するたった一人の女だと思うなんて事は、理性に訴えてできるはずがないでしょう」
「理性はどうでも、感情の上で、あたしだけをたった一人の女と思っていてくれれば、それでいいんです」
「あなただけを女と思えとおっしゃるのね。そりゃ解るわ。けれどもほかの女を女と思っちゃいけないとなるとまるで自殺と同じ事よ。もしほかの女を女と思わずにいられるくらいな夫なら、肝心のあなただって、やッぱり女とは思わないでしょう。自分の宅の庭に咲いた花だけが本当の花で、世間にあるのは花じゃない枯草だというのと同じ事ですもの」
「枯草でいいと思いますわ」
「あなたにはいいでしょう。けれども男には枯草でないんだから仕方がありませんわ。それよりか好きな女が世の中にいくらでもあるうちで、あなたが一番好かれている方が、嫂さんにとってもかえって満足じゃありませんか。それが本当に愛されているという意味なんですもの」
「あたしはどうしても絶対に愛されてみたいの。比較なんか始めから嫌いなんだから」


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