夏目漱石 『明暗』 「僕はやっぱり行くよ。どうしても行った方が…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』

現代語化

「やっぱり行くよ。どうしても行かなきゃいけないんだもん」
「じゃ行けば?」
「うん、行くよ。こんな所にいて、みんなにバカにされるより、朝鮮か台湾に行った方がずっといい」
「そんなに悲観すんなよ。年が若くて体が強けりゃ、どこに行っても立派にやっていけるだろ。――お前が立つ前に送別会を開こう、お前の機嫌を良くするために」
「お前が行ったらお金さんの結婚の時に困るでしょ」
「うん、あいつは可哀想だけど仕方ない。結局こんなヤクザなお兄ちゃんを持ったのが不幸だと思って、諦めてもらうしかない」
「お前がいなくなっても、おじさんとおばさんがなんとかしてくれるでしょ」
「まあそうなるよりほかに仕方ないからな。でなきゃこの結婚を断って、ずっと下働きとして先生の家に使ってもらうしかないけど、――どっちにしたって同じようなもんだけど。それより俺はまだ先生に悪いことがあるんだ。もし行くとなったら、先生から旅費を借りなきゃいけないからね」
「向こうでは出ないのか」
「出ないみたいだな」
「なんとかして出させたらいいよ」
「うーん」
「旅費は先生から借りる、コートはお前からもらう、たった一人の妹は置いていく、世話はないよ」

原文 (会話文抽出)

「僕はやっぱり行くよ。どうしても行った方がいいんだからね」
「じゃ行くさ」
「うん、行くとも。こんな所にいて、みんなに馬鹿にされるより、朝鮮か台湾に行った方がよっぽど増しだ」
「あんまりそう悲観しちゃいけないよ。年歯さえ若くって身体さえ丈夫なら、どこへ行ったって立派に成効できるじゃないか。――君が立つ前一つ送別会を開こう、君を愉快にするために」
「君が行ったらお金さんの結婚する時困るだろう」
「うん、あいつも可哀相だけれども仕方がない。つまりこんなやくざな兄貴をもったのが不仕合せだと思って、諦らめて貰うんだ」
「君がいなくったって、叔父や叔母がどうかしてくれるんだろう」
「まあそんな事になるよりほかに仕方がないからな。でなければこの結婚を断って、いつまでも下女代りに、先生の宅で使って貰うんだが、――そいつはまあどっちにしたって同じようなもんだろう。それより僕はまだ先生に気の毒な事があるんだ。もし行くとなると、先生から旅費を借りなければならないからね」
「向うじゃくれないのか」
「くれそうもないな」
「どうにかして出させたら好いだろう」
「さあ」
「旅費は先生から借りる、外套は君から貰う、たった一人の妹は置いてき堀にする、世話はないや」


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