夏目漱石 『明暗』 「やあちょうど好い。まだいる」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』

現代語化

「やあちょうどいい。まだいたんだ」
「おいもういい加減にしとけよ」
「まだ何にも言ってねぇじゃねぇか」
「だから注意してるんだ。俺の攻撃はいくらでも我慢するけど、関係ねぇ人の悪口だけは、ちっと遠慮しろよ、こんなとこに来て」
「厭に小心者だな。場末の酒場と一緒にすんなってことだろ」
「まあそんなとこだ」
「まあそんなんなら、俺みたいにどうしようもない奴をこんなとこに呼ぶのが間違いだ」
「じゃ勝手にしろ」
「口では勝手にしろって言いながら、内心ビビってんだろう」
「勝ったぞ、勝ったぞ。どうだ降参しただろ」
「それで勝ったつもりなら、勝手に勝ったつもりでいときなよ」
「その代わりこれからますますお前をバカにするから覚悟しとけ。俺は本当にお前のことなんて屁とも思ってねぇからな」
「思わねぇなら思わねぇでいいよ。五月蝿ぇ奴だな」
「どうだわかったか、おい。これが実戦ってやつだぜ。いくら余裕があっても、金持ちと付き合ってても、いくら気取り屋でも、実戦で負けりゃそれまでだ。だから俺がさっきから言ってるんだ、実際に揉まれてない奴は、木偶のボウと同じだって」
「そうだそうだ。世の中で一番強いのは、世渡り上手と酔っ払いだよな」

原文 (会話文抽出)

「やあちょうど好い。まだいる」
「おいもう好い加減に止せよ」
「まだ何にも云やしないじゃないか」
「だから注意するんだ。僕の攻撃はいくらでも我慢するが、縁もゆかりもない人の悪口などは、ちっと慎しんでくれ、こんな所へ来て」
「厭に小心だな。おおかた場末の酒場とここといっしょにされちゃたまらないという意味なんだろう」
「まあそうだ」
「まあそうだなら、僕のごとき無頼漢をこんな所へ招待するのが間違だ」
「じゃ勝手にしろ」
「口で勝手にしろと云いながら、内心ひやひやしているんだろう」
「勝ったぞ、勝ったぞ。どうだ降参したろう」
「それで勝ったつもりなら、勝手に勝ったつもりでいるがいい」
「その代り今後ますます貴様を軽蔑してやるからそう思えだろう。僕は君の軽蔑なんか屁とも思っちゃいないよ」
「思わなけりゃ思わないでもいいさ。五月蠅い男だな」
「どうだ解ったか、おい。これが実戦というものだぜ。いくら余裕があったって、金持に交際があったって、いくら気位を高く構えたって、実戦において敗北すりゃそれまでだろう。だから僕が先刻から云うんだ、実地を踏んで鍛え上げない人間は、木偶の坊と同なじ事だって」
「そうだそうだ。世の中で擦れっ枯らしと酔払いに敵うものは一人もないんだ」


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