夏目漱石 『明暗』 「それより君の方でその主意を男らしく僕に説…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』

現代語化

「それよりお前の方でその真意を男らしく俺に説明したらどうだ」
「男らしく? ふん」
「じゃ説明してやるよ。この人もこの手紙も、挙げ句の果てはこの手紙の中身も、全部お前には無関係だ。ただし世間の目から見ればな、わかるか。世間の意味をまた勘違いすんのはよくねぇから、ついでにそれも説明しとく。お前はこの手紙の内容に対して、世間でいう義務ってやつを負ってないんだ」
「当たり前じゃねぇか」
「だから世間的には無関係だって俺も言ってるんだ。でもお前の道徳観をちょっと大きくして考えてみりゃどうだい」
「大きくしたって、金をやらなきゃならないって義務なんて感じねぇよ」
「そうだろう、お前のことだから。でも同情心はちょっとは湧くだろ」
「そりゃ当然だろ」
「それだけで十分なんだ、俺の方には。同情心が湧くってことはつまり金がやりたいってことだろ。それで実際は金がやりたくねぇんだから、そこで良心の葛藤から来る不安が湧くんだ。俺の目的はそれでもう十分に達せられてるんだ」
「さあ受け取れ。要るだけ受け取れ」

原文 (会話文抽出)

「それより君の方でその主意を男らしく僕に説明したらいいじゃないか」
「男らしく? ふん」
「じゃ説明してやろう。この人もこの手紙も、乃至この手紙の中味も、すべて君には無関係だ。ただし世間的に云えばだぜ、いいかね。世間的という意味をまた誤解するといけないから、ついでにそれも説明しておこう。君はこの手紙の内容に対して、俗社会にいわゆる義務というものを帯びていないのだ」
「当り前じゃないか」
「だから世間的には無関係だと僕の方でも云うんだ。しかし君の道徳観をもう少し大きくして眺めたらどうだい」
「いくら大きくしたって、金をやらなければならないという義務なんか感じやしないよ」
「そうだろう、君の事だから。しかし同情心はいくらか起るだろう」
「そりゃ起るにきまってるじゃないか」
「それでたくさんなんだ、僕の方は。同情心が起るというのはつまり金がやりたいという意味なんだから。それでいて実際は金がやりたくないんだから、そこに良心の闘いから来る不安が起るんだ。僕の目的はそれでもう充分達せられているんだ」
「さあ取りたまえ。要るだけ取りたまえ」


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