GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』
現代語化
「だってあんまりお気の毒ですから」
「俺は俺でまたお前の方を気の毒に思ってるんだ」
「ええ、どうもありがとう」
「お前が目の前に座ってるその男は男でまた俺の方を気の毒に思ってるんだ」
「はぁ」
「その紙幣は3枚とも、俺が今その男からもらったんだ。もらいたてのほやほやなんだ」
「じゃなおどうも……」
「なおどうもじゃねぇ。だからだ。だから俺も気楽にお前にあげられるんだ。俺が気楽にお前にあげられるんだから、お前も気楽に受け取れるんだ」
「そういう理屈になるかしら」
「当たり前だ。もしこれが徹夜して書き上げた1枚35銭の原稿から生まれた金なら、いくら俺だって、少しは愛着が出るだろう。額からボタボタ垂れる汗に対しても済まないよ。でもこれは何でもないんだ。余裕が空間にまき散らしてくれる浄財だ。拾った奴が徳を積めば積むほど余裕は喜ぶだけなんだ。ねえ津田君そうだろう」
原文 (会話文抽出)
「なぜ取らないんだ、原君」
「でもあんまり御気の毒ですから」
「僕は僕でまた君の方を気の毒だと思ってるんだ」
「ええ、どうもありがとう」
「君の前に坐ってるその男は男でまた僕の方を気の毒だと思ってるんだ」
「はあ」
「その紙幣は三枚共、僕が今その男から貰ったんだ。貰い立てのほやほやなんだ」
「じゃなおどうも……」
「なおどうもじゃない。だからだ。だから僕も安々と君にやれるんだ。僕が安々と君にやれるんだから、君も安々と取れるんだ」
「そういう論理になるかしら」
「当り前さ。もしこれが徹夜して書き上げた一枚三十五銭の原稿から生れて来た金なら、何ぼ僕だって、少しは執着が出るだろうじゃないか。額からぽたぽた垂れる膏汗に対しても済まないよ。しかしこれは何でもないんだ。余裕が空間に吹き散らしてくれる浄財だ。拾ったものが功徳を受ければ受けるほど余裕は喜こぶだけなんだ。ねえ津田君そうだろう」