夏目漱石 『明暗』 「お延はどうしたい。行こう行こうと思いなが…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』

現代語化

「お延は?行きたい行きたいと思ってるうちに、貧乏暇なしでさ、ご無沙汰しちゃってるよ。よろしく伝えておいて。お前の留守中は暇で困ってるだろ、あの子も。一体何して過ごしてるんだっけ?」
「別に何もしてませんよ」
「病院に一緒にいれろなんて気楽なこと言うかと思えば、髪切りなせ温泉行けのって、おばさんよりよっぽどうるさいこと言ってますよ」
「感心だな。お前みたいなオシャレにそんな気配りする人なんて他にはいないよ」
「ありがたい幸せだな」
「芝居はどう?最近行く?」
「うん、たまに行くよ。こないだも岡本から誘われたんだけど、この病気の方を片付けなきゃいけないから」
「どう?おばさん、近いうちに帝劇にでも案内しようか。たまにはああいう所に行くのも薬だよ、気が晴れるから」
「ありがとう。でも由雄さんの案内じゃ――」
「嫌ですか?」
「嫌ってより、いつのことやら分かんないでしょ」

原文 (会話文抽出)

「お延はどうしたい。行こう行こうと思いながら、つい貧乏暇なしだもんだから、御無沙汰をしている。宜しく云ってくれ。お前の留守にゃ閑で困るだろうね、彼の女も。いったい何をして暮してるかね」
「何って別にする事もないでしょうよ」
「病院へいっしょに入りたいなんて気楽な事をいうかと思うと、やれ髪を刈れの湯に行けのって、叔母さんよりもよっぽどやかましい事を云いますよ」
「感心じゃないか。お前のようなお洒落にそんな注意をしてくれるものはほかにありゃしないよ」
「ありがたい仕合せだな」
「芝居はどうだい。近頃行くかい」
「ええ時々行きます。この間も岡本から誘われたんだけれども、あいにくこの病気の方の片をつけなけりゃならないんでね」
「どうです、叔母さん、近い内帝劇へでも御案内しましょうか。たまにゃああいう所へ行って見るのも薬ですよ、気がはればれしてね」
「ええありがとう。だけど由雄さんの御案内じゃ――」
「お厭ですか」
「厭より、いつの事だか分らないからね」


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