GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』
現代語化
「責めてないよ。褒めてるんだ。ほら、お前が由雄さんのところに行く前に、あの人を評した言葉があるだろう。あれを皆が陰で感心してるんだ。だから……」
「そんなこと聞かなくても、もうたくさんです。つまり私が芝居に行ったのが悪いんだから。……」
「何だかとんでもないことになっちゃったね。叔父さんの冗談の仕方が悪かったのかな?」
「いいえ。みんな私が悪いんでしょう」
「皮肉を言っちゃいけない。どこが悪いのか分からないから聞くんだ」
「だからみんな私が悪いんだって言うじゃありませんか」
「でも理由を言わないからさ」
「理由なんかないんです」
「理由がなくって、ただ悲しいのかい?」
「何なのこの人。子供じゃないんだから。お家にいた時分、いくら叔父さんにからかわれても、こんなに泣いたことなんて、なかったはずなのに。お嫁に行きたてで、少しご主人に可愛がられると、すぐにこうなるから困るんだよ、若い人は」
原文 (会話文抽出)
「何もそんなにまでして、あたしを苛めなくったって……」
「苛めやしないよ。賞めてるんだ。そらお前が由雄さんの所へ行く前に、あの人を評した言葉があるだろう。あれを皆な蔭で感心しているんだ。だから……」
「そんな事承わなくっても、もうたくさんです。つまりあたしが芝居へ行ったのが悪いんだから。……」
「何だかとんだ事になっちまったんだね。叔父さんの調戯い方が悪かったのかい」
「いいえ。皆んなあたしが悪いんでしょう」
「そう皮肉を云っちゃいけない。どこが悪いか解らないから訊くんだ」
「だから皆なあたしが悪いんだって云ってるじゃありませんか」
「だが訳を云わないからさ」
「訳なんかないんです」
「訳がなくって、ただ悲しいのかい」
「何だねこの人は。駄々ッ子じゃあるまいし。宅にいた時分、いくら叔父さんに調戯われたって、そんなに泣いた事なんか、ありゃしないくせに。お嫁に行きたてで、少し旦那から大事にされると、すぐそうなるから困るんだよ、若い人は」