夏目漱石 『明暗』 「それでお前はこの事件の責任者はお延だと云…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『明暗』

現代語化

「それであなたは、この事件の犯人はお延だと言いたいのかい」
「いいえ、お姉さんのことは何も言ってません。ただ、兄さんが変わった証拠として、その事実を言っただけです」
「あなたがそんなに私が変わったと主張したかったら、変わったらいいじゃないか」
「ダメです。お父さんとお母さんに申し訳ないです」
「そうかい」
「だったらそれでもいいですよ」
「兄さんが変わった証拠は他にもあるんです」
「兄さんは小林さんが兄さんの留守にきて、お姉さんに何か言うんじゃないかと、さっきから心配してるでしょ」
「うるさいな。心配じゃないってさっき説明したじゃないか」
「でも気になることは確かでしょ」
「どうでもいい。勝手に解釈すればいい」
「はい。――どっちでもいいですけど、とにかく、それが兄さんが変わった証拠じゃないですか」
「バカを言うな」
「いいえ、証拠です。確かな証拠です。兄さんはそれだけお姉さんのことが心配なんです」

原文 (会話文抽出)

「それでお前はこの事件の責任者はお延だと云うのかい」
「いいえ、嫂さんの事なんか、あたしちっとも云ってやしません。ただ兄さんが変った証拠にそれだけの事実を主張するんです」
「お前がそんなに変ったと主張したければ、変ったでいいじゃないか」
「よかないわ。お父さんやお母さんにすまないわ」
「そうかい」
「そんならそれでもいいよ」
「兄さんの変った証拠はまだあるんです」
「兄さんは小林さんが兄さんの留守へ来て、嫂さんに何か云やしないかって、先刻から心配しているじゃありませんか」
「煩さいな。心配じゃないって先刻説明したじゃないか」
「でも気になる事はたしかなんでしょう」
「どうでも勝手に解釈するがいい」
「ええ。――どっちでも、とにかく、それが兄さんの変った証拠じゃありませんか」
「馬鹿を云うな」
「いいえ、証拠よ。たしかな証拠よ。兄さんはそれだけ嫂さんを恐れていらっしゃるんです」


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