夏目漱石『明暗』「泊って行くなら、泊っといでよ。遠慮は要ら…

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青空文庫図書カード: 夏目漱石『明暗』

現代語化

「泊まってくなら、泊まっていきなよ。遠慮はいらないから」
「泊まっていきたくても、あなた、うちには下女がたった一人しかいなくて、この子の帰りを待ってるんですもの。そんなの無理です」
「ああ、そうか。なるほど。下女一人じゃ心細いね」
「私ってば、津田に入ってからまだ一晩も泊まったことないんですよ」
「ああ、そうだったっけ？それは感心なほど品行方正だね」
「いやよ。――由雄だって外泊したことなんて、まだないわよ」
「いや、素晴らしいですよ。ご夫婦揃ってお堅いのは――」
「何よりもって恐縮です」

原文 (会話文抽出)

「泊って行くなら、泊っといでよ。遠慮は要らないから」
「泊っていけったって、あなた、宅にゃ下女がたった一人で、この子の帰るのを待ってるんですもの。そんな事無理ですわ」
「はあ、そうかね、なるほど。下女一人じゃ不用心だね」
「あたしこれでも津田へ行ってからまだ一晩も御厄介になった事はなくってよ」
「はあ、そうだったかね。それは感心に品行方正の至だね」
「厭だ事。――由雄だって外へ泊った事なんか、まだ有りゃしないわ」
「いや結構ですよ。御夫婦お揃で、お堅くっていらっしゃるのは――」
「何よりもって恐悦至極」

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夏目漱石 『明暗』 「泊って行くなら、泊っといでよ。遠慮は要ら…

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