夏目漱石 『虞美人草』 [Gemini]
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夏目漱石 『虞美人草』
「恐ろしい頑固な山だなあ」…
「今日は山端の平八茶屋で一日遊んだ方がよか…
「君のように計画ばかりしていっこう実行しな…
「何だい」…
「いつの間に、こんなに高く登ったんだろう。…
「この辺の女はみんな奇麗だな。感心だ。何だ…
「さあ起きた。もう少しで頂上だ。どうせ休む…
「御山へ御登りやすのどすか、案内しまほうか…
「なるほど」…
「てへん+宛」…
「沙翁の描いたクレオパトラを見ると一種妙な…
「そよと吹く風の恋や、涙の恋や、嘆息の恋じ…
「オクテヴィヤの事を根堀り葉堀り、使のもの…
「そうですね。やっぱり人に因るでしょう」…
「清姫が蛇になったのは何歳でしょう」…
「可愛らしいんですよ。ちょうど安珍のような…
「近頃は女ばかりで淋しくっていけません」…
「なに?」…
「これの兄も御存じの通り随分変人ですから」…
「どうです」…
「寝てばかりいるね。まるで君は京都へ寝に来…
「おい、甲野さん、理窟ばかり云わずと、ちと…
「そう落ちついていちゃ仕方がない。こっちで…
「たしかに酔っ払ってるようだ。君はまた珍ら…
「いつまでも立ん坊か」…
「その袖無は手製か」…
「通してもいいんですか」…
「ええ天気だな」…
「明かだ」…
「それだけ、おれより下等なんだ。ちっと宗近…
「京都のものは朝夕都踊りをしている。気楽な…
「こうだ」…
「まるで猿だ」…
「あれだよ」…
「しばらく御目に懸りませんね。よくいらしっ…
「そんなに御用が御在りなの」…
「ホホホホどんな立派な奥さんでも、すぐ出来…
「二三日寝られないんです」…
「そう」…
「まだ京都から御音信はないですか」…
「京都にはだいぶ御知合があるでしょう。京都…
「蔦屋がどうかしたの」…
「あなたは、どんな所がいいと思います」…
「小米桜を二階の欄干から御覧になった事があ…
「だいぶ込み合うな」…
「随分早いね。何哩くらいの速力か知らん」…
「どうしても早いよ。おい」…
「御前が京都へ来たのは幾歳の時だったかな」…
「そうか、寝なかったのか」…
「もう直ですね」…
「おいいたぜ」…
「豚でもいいが、どうも不思議だよ」…
「蜜柑が食いたい」…
「どうする気なんでしょう」…
「御前あすこへ行く気があるのかい」…
「いっそ、ここで、判然断わろう」…
「通り路にないって……まあどこから登ったか…
「御叔父さん、東塔とか西塔とか云うのは何の…
「不便だって、修業のためにわざわざ、ああ云…
「あれでも昔しは真面目な坊主がいたものでし…
「君がぐずぐずしていると藤尾さんも困るだろ…
「やっぱり阿父とですか」…
「また来ましょう」…
「今帰ったよ。どうも苛い埃でね」…
「御湯に御這入んなさらないからですよ」…
「おや琴を弾いているね。――なかなか旨い。…
「まあ廃しましょう」…
「いや。だいぶ御暖になりました。さあどうぞ…
「御宅でも皆様御変りもなく……毎々欽吾や藤…
「嵐山と云えば」…
「どうです、京都から帰ってから少しは好いよ…
「その結婚の事を朝暮申すのでございますが―…
「いっそ、私からとくと談じて見ましょうか。…
「もし彼人が断然家を出ると云い張りますと―…
「糸公。こりゃ御前の座敷の方が明かるくって…
「云って見ましょうか」…
「糸公、誰か御客があるのかい」…
「兄さん」…
「大丈夫だ。京都でも甲野に話して置いた」…
「ハハハハ見えない所でも、旨く手が届くね。…
「あれが台湾館なの」…
「あの横に見えるのは何」…
「羅馬法王の冠か。藤尾さん、羅馬法王の冠は…
「阿爺、大丈夫」…
「小夜や、どうだい。あぶない、もう少しで紛…
「どうだい女連はだいぶ疲れたろう。ここで御…
「おい気がついたか」…
「見たかい甲野さん、驚いたね」…
「あら妙だわね。二人して……何を云っていら…
「そんな事知らないわ」…
「おや御出掛。少し御待ちなさいよ」…
「ホホホホ余まり周章るもんだから。御客様で…
「さあ」…
「昨夜は御忙しいところを……」…
「実は父が……」…
「そうさ」…
「兄さん」…
「今、ちょっと行こうと思って……」…
「一人で行ったのかい」…
「どうかしたのかい」…
「来ないなら、何とか云って来そうなもんだね…
「さっき欽吾が来やしないか」…
「今日は……」…
「奇麗でしたろう」…
「誰か御伴がありましたか」…
「甲野君に聞こうと思ったんですけれども、早…
「あんまり、勉強なさるとかえって金時計が取…
「御出?」…
「昨夕は、どうでした。疲れましたろう」…
「美しい花が咲いている」…
「あら」…
「いいですよ。それでいい。それで無くっちゃ…
「何を考えてるんだ。いくら呼んでも聴えない…
「散歩ですか」…
「あれは君の何だい」…
「君、あすこにだいぶ新刊の書物が来ているよ…
「みんな欲しそうだね」…
「どんな……」…
「あの令嬢がね。小野さん」…
「嵐山へ行くところも見た」…
「どうか、なさいましたか」…
「少しぞくぞくするようだ。羽織でも着よう」…
「東京は変ったね」…
「さっき御嬢さんが御出でした」…
「先生、御頼の洋灯の台を買って来ました」…
「ちょうどよく合うね。据りがいい。紫檀かい…
「なに小夜さえなければ、京都にいても差し支…
「気にいらんなんて――そんな事が――あるは…
「御前の方にもいろいろな都合はあるだろう。…
「少し灯が曲っているから……」…
「何だい」…
「じゃ、今夜は失礼します」…
「洋灯の台を買って来て下さったでしょうか」…
「欽吾にかい」…
「話はいつでも出来るよ。話すのが好ければ私…
「宗近の方は大丈夫なんでしょうね」…
「御前、一に逢うだろう」…
「どうだね、具合は」…
「身体が悪いと、つい気分まで欝陶しくなって…
「ちっと、日本間の方へ話にでも来て御覧。あ…
「世話はする気です」…
「世話をすると云うのは、世話になる方でこっ…
「藤尾はたしか二十四になったんですね」…
「どうだろう。もう一遍考え直してくれると好…
「どうだろうね」…
「母かさん。家は藤尾にやりますよ」…
「じゃ、どうあっても家を襲ぐ気はないんだね…
「ただ年を取って心細いから……たった一人の…
「宗近の方が小野より母さんを大事にします」…
「炙り出しはどうして」…
「藤尾、この家と、私が父さんから受け襲いだ…
「どこぞへ行くかね」…
「大変細い花ですね。――見た事がない。何と…
「あんまり奇麗にもならんじゃないか」…
「どうも、この襟飾は滑っていけない」…
「実は今までは、御前の位地もまだきまってい…
「だけれども断ったんだか、断らないんだか分…
「及第しても駄目なんですか」…
「元来そりゃいつの事です」…
「今日は勉強だね。珍らしい。何だい」…
「見留じゃないか。なんだ――甲野」…
「どうだい、御嫁は。厭でもないだろう」…
「笑い事じゃない。本当に腹を切るよ。好いか…
「私は御嫁には行きません」…
「久しぶりで郊外へ来て好い心持だ」…
「一本どうだね」…
「今月末でも、いつでも好い。――その代り少…
「もったいない事をするのう」…
「暑いのう」…
「その代り先生の世話は生涯する考だ。僕もい…
「こう日が照ると、麦の香が鼻の先へ浮いてく…
「君もし宗近へ行ったらね。井上先生の事は話…
「何をしているね」…
「何を見ているんだ」…
「何をするんだ」…
「藤尾だ」…
「これからだ」…
「本来の無一物から出直すとは」…
「貴様、気が狂ったか」…
「僕のうちへ来ないか」…
「御嬢さんは、東京を御存じでしたな」…
「御薬はもう上がったんですか」…
「羽織でも召していらしったら好いでしょう」…
「おい、無いかね。どうした」…
「小野は近頃非常なハイカラになりました。あ…
「実は頼まれたんです」…
「理由はですな。博士にならなければならない…
「じゃ、まあ御待ちなさい、先生。もう一遍小…
「そう返事をして差支ないだろうね」…
「昨日は失敬した」…
「小野さん、そこに気がついているのかね」…
「君は学問も僕より出来る。頭も僕より好い。…
「真面目な処置は、出来るだけ早く、小夜子と…
「実はそう云うしだいで突然参上致したので、…
「しかしそれがために小野が藤尾さんとか云う…
「ちょいと御待ち」…
「こんな雨の降るのに」…
「兄が欽吾さんを連れて来いと申しましたから…
「少しは分ったかい」…
「雨の降るのに、まあよく……」…
「約束を守らなければ、説明が要ります」…
「嘘です。嘘です」…
「御線香が切れやしないかしら」…
「御叔母さん、飛んだ事になって、御気の毒だ…
「どうしたら好いか――それを思うと――一さ…
「ページ-行」…
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