GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』
現代語化
「やめる?やめるならやめときなさい。――あの、小野はね。最近忙しいんだよ。まもなく博士論文を出すんだって……」
「だから落ち着いてないんです。勉強熱心になるとみんなああなるものさ。あんまり心配しないで。どうせゆっくりしたいと思ってもできないんだから仕方ないよ。え?なんだって」
「あんなにね」
「うん」
「急いでね」
「ああ」
「御帰りになって……」
「御帰りになって――なった?ならなくても?いいじゃない。学問で夢中になってるんだから。――だから一日都合をつけてもらって、一緒に博覧会でも見ようって言ってるんじゃないか。あなたに話した?」
「いいえ」
「話さない?話せばいいのに。一体小野が来たって言うのに何をしていたんだ。いくら女性だって、少しは話さなくちゃいけない」
「別にいいですよ。お父さんが手紙で連絡するから――悲しまないで。叱ったんじゃないよ。――ところで晩ご飯はあるの?」
「ご飯だけはあります」
「ご飯だけあればいい、おかずはいらないよ。――頼んでおいたおばさんが明日来るそうだ。――もう少し慣れれば、東京も京都も同じさ」
原文 (会話文抽出)
「まあ廃しましょう」
「廃す? 廃すなら御廃し。――あの、小野はね。近頃忙がしいんだよ。近々博士論文を出すんだそうで……」
「だから落ちついていないんだよ。学問に凝ると誰でもあんなものさ。あんまり心配しないがいい。なに緩くりしたくっても、していられないんだから仕方がない。え? 何だって」
「あんなにね」
「うん」
「急いでね」
「ああ」
「御帰りに……」
「御帰りに――なった? ならないでも? 好さそうなものだって仕方がないよ。学問で夢中になってるんだから。――だから一日都合をして貰って、いっしょに博覧会でも見ようって云ってるんじゃないか。御前話したかい」
「いいえ」
「話さない? 話せばいいのに。いったい小野が来たと云うのに何をしていたんだ。いくら女だって、少しは口を利かなくっちゃいけない」
「なに好いよ。阿父が手紙で聞き合せるから――悲しがる事はない。叱ったんじゃない。――時に晩の御飯はあるかい」
「御飯だけはあります」
「御飯だけあればいい、なに御菜はいらないよ。――頼んで置いた婆さんは明日くるそうだ。――もう少し慣れると、東京だって京都だって同じ事だ」