夏目漱石 『虞美人草』 「今日は勉強だね。珍らしい。何だい」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』

現代語化

「今日は勉強してるんだね。珍しい。何だよ」
「何でもありませんよ」
「何でもない本を読むなんて、天下の偉い人だね」
「どうせ、そんな感じです」
「やめたっていいじゃないか。まるで書置きでももらったみたいだ」
「書置きでも何でも、好きなようにして。あなたのせいだからあっちに行ってください」
「すごい邪魔をするね。糸ちゃん、親父さんが、そう言ってたよ」
「何て?」
「糸はちょっと女大学でも読めばいいのに、最近は恋愛小説ばかり読んでて、困るって」
「あら、嘘ばっかり。私がいつそんなものを読んで」
「お兄さんは知らないよ。お父さんがそう言うんだから」
「嘘よ、お父様がそんなことおっしゃるわけないじゃないですか」
「そうかい。だって、人が来ると読んでいる本を伏せて、枡落としみたい一生懸命隠してるのを見ると、お父さんの言うことも全然嘘とは思えないじゃないか」
「嘘ですよ。嘘だっていうのに、あなたもすごく卑怯な方ですね」
「卑怯は大げさだな。注意人物の売国奴じゃないかハハハハ」
「だって人の言うことを信じないんですもの。それなら証拠をお見せしましょうか。ね。ちょっと待っててください」

原文 (会話文抽出)

「今日は勉強だね。珍らしい。何だい」
「何でもありませんよ」
「何でもない本を読むなんて、天下の逸民だね」
「どうせ、そうよ」
「手を放したって好いじゃないか。まるで散らしでも取ったようだ」
「散らしでも何でも好くってよ。御生だからあっちへ行ってちょうだい」
「大変邪魔にするね。糸公、父っさんが、そう云ってたぜ」
「何て」
「糸はちっと女大学でも読めば好いのに、近頃は恋愛小説ばかり読んでて、まことに困るって」
「あら嘘ばっかり。私がいつそんなものを読んで」
「兄さんは知らないよ。阿父さんがそう云うんだから」
「嘘よ、阿父様がそんな事をおっしゃるもんですか」
「そうかい。だって、人が来ると読み掛けた本を伏せて、枡落し見たように一生懸命におさえているところをもって見ると、阿父さんの云うところもまんざら嘘とは思えないじゃないか」
「嘘ですよ。嘘だって云うのに、あなたもよっぽど卑劣な方ね」
「卑劣は一大痛棒だね。注意人物の売国奴じゃないかハハハハ」
「だって人の云う事を信用なさらないんですもの。そんなら証拠を見せて上げましょうか。ね。待っていらっしゃいよ」


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