夏目漱石 『虞美人草』 「近頃は女ばかりで淋しくっていけません」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』

現代語化

「最近は女ばっかりでつまんねぇよ」
「甲野君はいつ頃帰ってくるんですか」
「いつ頃帰るか、全然わかんないです」
「連絡があったりしますか」
「ないです」
「天気がいいから京都は楽しいでしょうね」
「あなたも一緒に行けばよかったのに」
「私は……」
「なんで行かなかったの」
「別に理由はないです」
「だって、昔からの仲でしょ」
「え?」
「え?」
「京都には長いこといたんじゃないんですか」
「それで知り合いなんですか」
「うん」
「昔から知り合いすぎて、もう行く気がなくなったんです」
「ずいぶん冷たいのね」
「いや、そんなことないです」
「藤尾、藤尾」
「お母さんでしょう」
「うん」
「じゃ、もう帰ります」
「なんでです」
「でも何か用事があるんでしょう」
「あったっていいじゃないの。先生じゃないの。先生が教えに来てるんだから、誰が帰ったっていいじゃないの」
「でも全然教えてくれないから」
「教えてもらってるわよ。これだけ教えてもらえれば十分よ」
「そうなんですか」
「クレオパトラとか、いろいろ教えてもらってるでしょ」
「クレオパトラなんて別にいくらでもあるよ」
「藤尾、藤尾」
「失礼しますけどちょっと失礼します。――なにまだ聞きたいことがあるから待っててください」

原文 (会話文抽出)

「近頃は女ばかりで淋しくっていけません」
「甲野君はいつ頃御帰りですか」
「いつ頃帰りますか、ちっとも分りません」
「御音信が有りますか」
「いいえ」
「時候が好いから京都は面白いでしょう」
「あなたもいっしょに御出になればよかったのに」
「私は……」
「なぜ行らっしゃらなかったの」
「別に訳はないんです」
「だって、古い御馴染じゃありませんか」
「え?」
「え?」
「京都には長い事、いらしったんじゃありませんか」
「それで御馴染なんですか」
「ええ」
「あんまり古い馴染だから、もう行く気にならんのです」
「随分不人情ね」
「なに、そんな事はないです」
「藤尾、藤尾」
「御母さんでしょう」
「ええ」
「私はもう帰ります」
「なぜです」
「でも何か御用が御在りになるんでしょう」
「あったって構わないじゃありませんか。先生じゃありませんか。先生が教えに来ているんだから、誰が帰ったって構わないじゃありませんか」
「しかしあんまり教えないんだから」
「教わっていますとも、これだけ教わっていればたくさんですわ」
「そうでしょうか」
「クレオパトラや、何かたくさん教わってるじゃありませんか」
「クレオパトラぐらいで好ければ、いくらでもあります」
「藤尾、藤尾」
「失礼ですがちょっと御免蒙ります。――なにまだ伺いたい事があるから待っていて下さい」


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