GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』
現代語化
「ありがとうございます」
「どうせ相手になるような話はできないですけどね――それでもバカはバカなりにね。……」
「扇骨木がすごくきれいに芽吹きましたね」
「見事ですよね。派手な花よりもいいですね。ここからだと、たった一本しか見えませんね。向こう側に回ると刈り込んだのが丸く揃って、あれがきれい」
「あなたの部屋からが一番よく見えるみたいですね」
「ああ、ご覧なさい」
「それにね。最近は暖かいせいか池の緋鯉が、本当によく跳ぶんです……ここから聞こえますか?」
「鯉の跳ねる音ですか?」
「はい」
「いいえ」
「聞こえないと思います。こう立て切っちゃってますからね。お母さんの部屋からでも聞こえないくらいですから。この間藤尾に、お母さんは耳が悪くなったって、さんざん笑われたんです。――もっとも、もう耳が悪くなってもいい年だから仕方がないんですけど」
「藤尾さんはいますか?」
「いますよ。もう小野さんが来て稽古をする頃でしょう。――何か用ですか?」
「いえ、何も」
「あの子も、あんな気性の強い子で、きっとあなたの気に障ることあると思いますけど、まあ我慢して、本当の妹だと思って面倒見てあげてください」
原文 (会話文抽出)
「ちっと、日本間の方へ話にでも来て御覧。あっちは、廓っとして、書斎より心持が好いから。たまには、一のようにつまらない女を相手にして世間話をするのも気が変って面白いものだよ」
「ありがとう」
「どうせ相手になるほどの話は出来ないけれども――それでも馬鹿は馬鹿なりにね。……」
「扇骨木が大変奇麗に芽を吹きましたね」
「見事だね。かえって生じいな花よりも、好ござんすよ。ここからは、たった一本しっきゃ見えないね。向へ廻ると刈り込んだのが丸く揃って、そりゃ奇麗」
「あなたの部屋からが一番好く見えるようですね」
「ああ、御覧かい」
「それにね。近頃は陽気のせいか池の緋鯉が、まことによく跳るんで……ここから聞えますかい」
「鯉の跳る音がですか」
「ああ」
「いいえ」
「聞えない。聞えないだろうねこう立て切って有っちゃあ。母さんの部屋からでも聞えないくらいだから。この間藤尾に母さんは耳が悪くなったって、さんざん笑われたのさ。――もっとも、もう耳も悪くなって好い年だから仕方がないけれども」
「藤尾はいますか」
「いるよ。もう小野さんが来て稽古をする時分だろう。――何か用でもあるかい」
「いえ、用は別にありません」
「あれも、あんな、気の勝った子で、さぞ御前さんの気に障る事もあろうが、まあ我慢して、本当の妹だと思って、面倒を見てやって下さい」