夏目漱石 『虞美人草』 「しかしそれがために小野が藤尾さんとか云う…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』

現代語化

「でも、それで小野さんが藤尾さんとかいう女性と結婚でもしたら、あなたのご子息に迷惑がかかりますね」
「いや――それは――心配ご無用です。息子はもらわないことに決めました。たぶん――いやもらいません。もらうとしても私が反対します。息子を嫌うような女性は、息子がもらいたいと言っても私は許しません」
「小夜子、宗近さんの父親も、同じことを言ってるんだよ。あなたもそう思うでしょう?」
「私――行かなくても――いいんです」
「いや、そうは困る。私がわざわざ来た甲斐がない。小野さんにもだんだん事情があるだろうから、息子の意見次第で、どうか先ほどお話ししたようにご承諾いただけないか。――自分で息子のことをあれこれ言うのは変な話ですが、息子は理屈の分かる奴で、決して後であなた方に迷惑をかけるようなことはしません。破談になった方がお幸せだと考えれば、そのように勧めてくるでしょう。――初めてお目にかかったのですが、どうか私を信じてください。――もう連絡しそうな時間ですが、あいにくの雨で……」

原文 (会話文抽出)

「しかしそれがために小野が藤尾さんとか云う婦人と結婚でもしたら、御子息には御気の毒ですな」
「いや――そりゃ――御心配には及ばんです。忰は貰わん事にしました。多分――いや貰わんです。貰うと云っても私が不承知です。忰を嫌うような婦人は、忰が貰いたいと申しても私が許しません」
「小夜や、宗近さんの阿父さんも、ああおっしゃる。同じ事だろう」
「私は――参らんでも――宜しゅうございます」
「いや、そうなっちゃ困る。私がわざわざ飛んで来た甲斐がない。小野氏にもだんだん事情のある事だろうから、まあ忰の通知しだいで、どうか、先刻御話を申したように御聞済を願いたい。――自分で忰の事をかれこれ申すのは異なものだが、忰は事理の分った奴で、けっして後で御迷惑になるような取計は致しますまい。御破談になった方が御為だと思えばその方を御勧めして来るでしょう。――始めて御目に懸ったのだがどうか私を御信用下さい。――もう何とか云って来る時分だが、あいにくの雨で……」


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