夏目漱石 『虞美人草』 「そんな事知らないわ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』

現代語化

「そんなこと知らないわ」
「おじいちゃんが言ってたじゃないか。学生が西洋菓子なんか食べるなんて、日本も終わりだって」
「ホホホホそんなことおっしゃるわけないでしょ」
「言わない? あんたよく覚えてないね。こないだ甲野さんとかと晩ご飯を食べたとき、そう言ってたじゃないか」
「そうじゃないわ。学生のくせに西洋菓子なんか食べるのはだらしない人だって、おっしゃったんですよ」
「ああ、そうだったか。亡国の菓子じゃなかったんだ。とにかくおじいちゃんは西洋菓子が嫌いだよ。柿羊羹か味噌松風、変なもんばっかり大事にしてる。藤尾さんみたいなハイカラさんのところに行くとすぐバカにされるよ」
「そう、おじいちゃんの悪口言わなくてもいいわ。兄さんだって、もう学生じゃないから西洋菓子を食べたって大丈夫ですよ」
「もう怒られる心配はないんだね。それじゃ一つあげるよ。糸も一つどうぞ。どうだい藤尾さん、一つ。――でもなあ。おじいちゃんみたいな人はこれから日本でどんどん減っていくんだろうね。惜しいものだ」
「ホホホホ一人でよくしゃべりまくるわね……」
「藤尾は食べないのか?」
「たくさん食べたよ」

原文 (会話文抽出)

「そんな事知らないわ」
「そら阿爺が云ったじゃないか。書生が西洋菓子なんぞを食うようじゃ日本も駄目だって」
「ホホホホそんな事をおっしゃるもんですか」
「云わない? 御前よっぽど物覚がわるいね。そらこの間甲野さんや何かと晩飯を食った時、そう云ったじゃないか」
「そうじゃないわ。書生の癖に西洋菓子なんぞ食うのはのらくらものだっておっしゃったんでしょう」
「はああ、そうか。亡国の菓子じゃなかったかね。とにかく阿爺は西洋菓子が嫌だよ。柿羊羹か味噌松風、妙なものばかり珍重したがる。藤尾さんのようなハイカラの傍へ持って行くとすぐ軽蔑されてしまう」
「そう阿爺の悪口をおっしゃらなくってもいいわ。兄さんだって、もう書生じゃないから西洋菓子を食べたって大丈夫ですよ」
「もう叱られる気遣はないか。それじゃ一つやるかな。糸公も一つ御上り。どうだい藤尾さん一つ。――しかしなんだね。阿爺のような人はこれから日本にだんだん少なくなるね。惜しいもんだ」
「ホホホホ一人で饒舌って……」
「藤尾は何も食わないのか」
「たくさん」


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