GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』
現代語化
「あの堂は木造だけど簡単には壊せないように見える」
「つまり形がうまくそうができてるんだろう。アリストテレスの言う理形に当てはまるのかもしれない」
「だいぶ難しいね。――アリストートルはどうでもいいけど、この辺のお寺はどれも、何とも不思議な感じがあるんだよね」
「舟板塀趣味とか御神灯趣味とは違う。夢窓国師が建てたんだもの」
「あの堂を見上げて、ちょっとわけのわからない気分になるのは、つまり自分が夢窓国師になったってことだな。ハハハハ。夢窓国師もちょっと話してみたい」
「夢窓国師や大燈国師になれるから、こんなところを散歩する価値があるんだ。ただ見物したってつまんないよ」
「夢窓国師も屋上になって明治まで生きてたら面白いだろうな。安っぽい銅像よりよっぽどいい」
「そうだね、一目瞭然だよ」
「何が」
「何がって、この境内だよ。全然曲がってない。どこまでも明らかだ」
「ちょうど俺みたいだな。だから、俺は寺に来ると気分がいいんだろう」
「ハハハそうかもしれない」
「そうすると夢窓国師が俺に似てるんじゃなくて、俺が夢窓国師に似てるってことか」
「どっちでもいいよ。――まぁ、ちょっと休もうか」
原文 (会話文抽出)
「明かだ」
「あの堂は木造でも容易に壊す事が出来ないように見える」
「つまり恰好が旨くそう云う風に出来てるんだろう。アリストートルのいわゆる理形に適ってるのかも知れない」
「だいぶむずかしいね。――アリストートルはどうでも構わないが、この辺の寺はどれも、一種妙な感じがするのは奇体だ」
「舟板塀趣味や御神灯趣味とは違うさ。夢窓国師が建てたんだもの」
「あの堂を見上げて、ちょっと変な気になるのは、つまり夢窓国師になるんだな。ハハハハ。夢窓国師も少しは話せらあ」
「夢窓国師や大燈国師になるから、こんな所を逍遥する価値があるんだ。ただ見物したって何になるもんか」
「夢窓国師も家根になって明治まで生きていれば結構だ。安直な銅像よりよっぽどいいね」
「そうさ、一目瞭然だ」
「何が」
「何がって、この境内の景色がさ。ちっとも曲っていない。どこまでも明らかだ」
「ちょうどおれのようだな。だから、おれは寺へ這入ると好い気持ちになるんだろう」
「ハハハそうかも知れない」
「して見ると夢窓国師がおれに似ているんで、おれが夢窓国師に似ているんじゃない」
「どうでも、好いさ。――まあ、ちっと休もうか」