夏目漱石 『虞美人草』 「大丈夫だ。京都でも甲野に話して置いた」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』

現代語化

「大丈夫だよ。京都でも甲野に話しておいた」
「そう」
「兄ちゃんが外国に行ったら、何か買って送ってあげるよ」
「今回の試験の結果はまだ分かんないよ」
「もうそろそろ出るんじゃないの?」
「今度は絶対合格してよ」
「え、うん。アハハハハ。まあいいよ」
「いいわけないじゃん。――藤尾さんってね。勉強ができて、信頼できる人が好きなのよ」
「兄ちゃんは勉強ができなくて、信用がないのかな」
「そうじゃないのよ。そうじゃないんだけど――まあ例えば、あの小野さんって人がいるでしょう」
「うん」
「首席で銀時計をもらったって。今は博士論文を書いてるみたいよ。――藤尾さんはそういう人が好きなのよ」
「そうか。おやおや」
「何でおやおやなの。だってすごいじゃない」
「兄ちゃんは銀時計ももらえず、博士論文も書けず。落第してる。不名誉の極みだ」
「あら不名誉なんて誰も言わないわ。ただあんまり楽観的すぎるのよ」
「あんまり楽観的過ぎるよ」
「ホホホホおかしいわね。なんか全然気にしてなさそうね」
「糸、兄ちゃんは勉強もできなくて落第もするけど――まあいいや、 どうでもいい。ところでさ、お前は兄ちゃんをいい兄ちゃんだと思ってる?」
「そう思うよ」
「小野さんとどっちがいい?」
「そりゃ兄ちゃんの方がいいわ」
「甲野さんと?」
「知らないわ」

原文 (会話文抽出)

「大丈夫だ。京都でも甲野に話して置いた」
「そう」
「兄さんが今に外国へ行ったら、御前に何か買って送ってやるよ」
「今度の試験の結果はまだ分らないの」
「もう直だろう」
「今度は是非及第なさいよ」
「え、うん。アハハハハ。まあ好いや」
「好かないわ。――藤尾さんはね。学問がよく出来て、信用のある方が好きなんですよ」
「兄さんは学問が出来なくって、信用がないのかな」
「そうじゃないのよ。そうじゃないけれども――まあ例に云うと、あの小野さんと云う方があるでしょう」
「うん」
「優等で銀時計をいただいたって。今博士論文を書いていらっしゃるってね。――藤尾さんはああ云う方が好なのよ」
「そうか。おやおや」
「何がおやおやなの。だって名誉ですわ」
「兄さんは銀時計もいただけず、博士論文も書けず。落第はする。不名誉の至だ」
「あら不名誉だと誰も云やしないわ。ただあんまり気楽過ぎるのよ」
「あんまり気楽過ぎるよ」
「ホホホホおかしいのね。何だかちっとも苦にならないようね」
「糸公、兄さんは学問も出来ず落第もするが――まあ廃そう、どうでも好い。とにかく御前兄さんを好い兄さんと思わないかい」
「そりゃ思うわ」
「小野さんとどっちが好い」
「そりゃ兄さんの方が好いわ」
「甲野さんとは」
「知らないわ」


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