夏目漱石 『虞美人草』 「少しぞくぞくするようだ。羽織でも着よう」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』

現代語化

「ちょっと寒気がするわ。羽織でも着ようかな」
「寝てたほうがいいですよ」
「いや、ちょっと起きてみよう」
「何なんですか?」
「風邪でもないみたいだけど、――どうせ大したことはないでしょ」
「昨日出かけたのが悪かったんですかね」
「いや、なんでもない。――ところで昨日は本当にお世話になりました」
「いえいえ」
「小夜もすごく喜んで。おかげでいい保養になりました」
「もう少し暇だったら、あちこちご一緒できたんですけど……」
「忙しいんでしょ?いや、忙しいのはいいことだ」
「どうも気を使わせてしまって……」
「いや、そんな心配は全然いらないよ。君の忙しさは、結局僕らの幸せなんだから」
「ところでご飯は食べた?」
「はい」
「食べた?――食べてなかったら上がりなよ。何もないけどお茶漬けならあると思う」
「先生、もういいんです。ご飯は食べてきました」
「本当かい。遠慮はいらないよ」
「遠慮しませんよ」
「咳は出ますか?」
「から――からって咳が出て……」

原文 (会話文抽出)

「少しぞくぞくするようだ。羽織でも着よう」
「寝ていらしったら好いでしょう」
「いや少し起きて見よう」
「何ですかね」
「風邪でもないようだが、――なに大した事もあるまい」
「昨夕御出になったのが悪かったですかね」
「いえ、なに。――時に昨夕は大きに御厄介」
「いいえ」
「小夜も大変喜んで。御蔭で好い保養をした」
「もう少し閑だと、方々へ御供をする事が出来るんですが……」
「忙がしいだろうからね。いや忙がしいのは結構だ」
「どうも御気の毒で……」
「いや、そんな心配はちっとも要らない。君の忙がしいのは、つまり我々の幸福なんだから」
「時に飯は食ったかね」
「ええ」
「食った?――食わなければ御上り。何にもないが茶漬ならあるだろう」
「先生、もう好いんです。飯は済まして来たんです」
「本当かい。遠慮しちゃいかん」
「遠慮しやしません」
「咳が出ますか」
「から――からっ咳が出て……」


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