GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』
現代語化
「別に美人じゃないよ。帰ったら甲野君に聞いてみて」
「兄ちゃんがそんな話するわけないじゃん」
「じゃあ宗近君に」
「兄ちゃんは美人がいっぱいいるって言ってたよ」
「宗近君って、前に京都行ったことあるの?」
「うん、ないけど手紙くれたの」
「あれ?じゃあ鉄砲玉じゃないんだ。手紙来たんだ」
「はがきだよ。都踊りのハガキ送ってきて、その端に京都の女はみんな綺麗って書いてあるの」
「へえー、そんなに綺麗なの」
「なんか白い顔がたくさん並んでて、誰が誰だか分かんない。見てるだけならいいかも」
「ただ見ると白い顔ばっかりだよ。綺麗は綺麗だけど、表情がなくてつまらない」
「そんで、まだ書いてあるんだよ」
「ふざけてるね。なんだっけ」
「隣のお家の琴が私より上手だって」
「ハハハ、宗近に琴の批評ができるわけないじゃん」
「私に当てつけてんのよ。琴下手だから」
「ハハハ、宗近もひどいこと言うわね」
「しかも、私より美人だって書いてあるの。ムカつくー」
「宗近って本当何でもはっきり言うよね。私なんて宗近に会ったら敵わないわ」
「でも、あなたのこと褒めてるよ」
「え?なになに」
「私より美人だけど、藤尾さんよりはブスだって」
「やだー」
原文 (会話文抽出)
「京都にはだいぶ御知合があるでしょう。京都の方を一さんに御世話なさいよ。京都には美人が多いそうじゃありませんか」
「なに実際美しくはないんです。――帰ったら甲野君に聞いて見ると分ります」
「兄がそんな話をするものですか」
「それじゃ宗近君に」
「兄は大変美人が多いと申しておりますよ」
「宗近君は前にも京都へいらしった事があるんですか」
「いいえ、今度が始めてですけれども、手紙をくれまして」
「おや、それじゃ鉄砲玉じゃないのね。手紙が来たの」
「なに端書よ。都踊の端書をよこして、そのはじに京都の女はみんな奇麗だと書いてあるのよ」
「そう。そんなに奇麗なの」
「何だか白い顔がたくさん並んでてちっとも分らないわ。ただ見たら好いかも知れないけれども」
「ただ見ても白い顔が並んどるばかりです。奇麗は奇麗ですけれども、表情がなくって、あまり面白くはないです」
「それから、まだ書いてあるんですよ」
「無精に似合わない事ね。何と」
「隣家の琴は御前より旨いって」
「ホホホ一さんに琴の批評は出来そうもありませんね」
「私にあてつけたんでしょう。琴がまずいから」
「ハハハハ宗近君もだいぶ人の悪い事をしますね」
「しかも、御前より別嬪だと書いてあるんです。にくらしいわね」
「一さんは何でも露骨なんですよ。私なんぞも一さんに逢っちゃ叶わない」
「でも、あなたの事は褒めてありますよ」
「おや、何と」
「御前より別嬪だ、しかし藤尾さんより悪いって」
「まあ、いやだ事」