GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』
現代語化
「嫁のことですか?」
「そうだよ。どうせ外国に行くなら、行く前に決めるか、結婚するか、それとも連れて行くか……」
「とても連れて行けませんよ。金がないから」
「連れて行かなくてもいい。ちゃんと片付けて、置いて行くなら。留守中は私が大事に預かってやる」
「自分もそうしようと思ってるんです」
「どうだい?気に入った女性でもいるのかい?」
「甲野の妹をもらおうと思ってるんですが、どうでしょう」
「藤尾かい。うん」
「ダメですかね?」
「なに、ダメじゃない」
「外交官の妻には、ああいう人でないといけないです」
「そうなんだよ。実は甲野の親父が生きてるうち、俺と親父の間に、少しはその話もあったんだがな。お前は知らないかもしれないけど」
「おじさんは時計をやると言いました」
「あの金時計かい?藤尾が弄んで有名な」
「えぇ、あの太古の時計です」
「ハハハハあれで針が回るかな?時計はそれとして、実は肝心の本人のことだけど――こないだ甲野の母さんが来たとき、ついでに話してみたんだがね」
「はあ、なんとおっしゃいましたか?」
「まことにいい縁だけど、まだ身分が決まって出世してないから残念だけどね……」
「身分が決まらないというのは外交官の試験に受からないという意味ですか?」
「まあ、そうだろう」
「だろうというのはちょっと驚いたな」
「いや、あの女の言うことは、すごく饒舌だけど意味が通じなくて困る。滔々と述べることは述べるけど、結局要点が分からない。つまり要領が悪い女だ」
原文 (会話文抽出)
「実は今までは、御前の位地もまだきまっていなかったから、さほどにも云わなかったが……」
「嫁ですかね」
「そうさ。どうせ外国へ行くなら、行く前にきめるとか、結婚するとか、または連れて行くとか……」
「とても連れちゃ行かれませんよ。金が足りないから」
「連れて行かんでも好い。ちゃんと片をつけて、そうして置いて行くなら。留守中は私が大事に預かってやる」
「私もそうしようと思ってるんです」
「どうだなそこで。気に入った婦人でもあるかな」
「甲野の妹を貰うつもりなんですがね。どうでしょう」
「藤尾かい。うん」
「駄目ですかね」
「なに駄目じゃない」
「外交官の女房にゃ、ああ云うんでないといけないです」
「そこでだて。実は甲野の親父が生きているうち、私と親父の間に、少しはその話もあったんだがな。御前は知らんかも知らんが」
「叔父さんは時計をやると云いました」
「あの金時計かい。藤尾が玩弄にするんで有名な」
「ええ、あの太古の時計です」
「ハハハハあれで針が回るかな。時計はそれとして、実は肝心の本人の事だが――この間甲野の母さんが来た時、ついでだから話して見たんだがね」
「はあ、何とか云いましたか」
「まことに好い御縁だが、まだ御身分がきまって御出でないから残念だけれども……」
「身分がきまらないと云うのは外交官の試験に及第しないと云う意味ですかね」
「まあ、そうだろう」
「だろうはちっと驚ろいたな」
「いや、あの女の云う事は、非常に能弁な代りによく意味が通じないで困る。滔々と述べる事は述べるが、ついに要点が分らない。要するに不経済な女だ」