GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』
現代語化
「実はこの間会ったときも、ちょっとその話をしたんですがね。君がいつまでも強情を張ると心配するのはお母さんだけだから、可哀想だから、今のうちにさっさと身固めて安心させてあげたらいいだろうってね」
「お親切にありがとうございます」
「いえいえ、心配は互いにあって、こっちもちょうどどうにかしなければならないのを2人抱えてるもんだから、アハハハハどうもですね。何歳になっても心配は尽きませんね」
「あなたは結構ですが、私は――もし彼がいつまでも「病気だ病気だ」と言って嫁をもらってくれないうちに、もしものことがあったら、あの世で配偶者に合わせられる顔がありません。一体なぜ、そんなに聞き分けがないんでしょう。何か言い出すと、「お母さんはこんな体で、とても家の面倒は見ていけませんから、藤尾にもらわれて、お母さんの世話をさせてください。私は財産なんか1銭もいりません」と、まあこうなんです。私が本当の親なら、「それじゃあなたの勝手におす」と言うこともできますが、ご存じの通り実の母子ではないですから、そんな不義理なことは人様に対してもできませんし、本当に途方に暮れます」
原文 (会話文抽出)
「その結婚の事を朝暮申すのでございますが――どう在っても、うんと云って承知してくれません。私も御覧の通り取る年でございますし、それに甲野もあんな風に突然外国で亡くなりますような仕儀で、まことに心配でなりませんから、どうか一日も早く彼人のために身の落つきをつけてやりたいと思いまして……本当に、今まで嫁の事を持ち出した事は何度だか分りません。が持ち出すたんびに頭から撥ねつけられるのみで……」
「実はこの間見えた時も、ちょっとその話をしたんですがね。君がいつまでも強情を張ると心配するのは阿母だけで、可愛想だから、今のうちに早く身を堅めて安心させたら善かろうってね」
「御親切にどうもありがとう存じます」
「いえ、心配は御互で、こっちもちょうどどうかしなければならないのを二人背負い込んでるものだから、アハハハハどうも何ですね。何歳になっても心配は絶えませんね」
「此方様などは結構でいらっしゃいますが、私は――もし彼人がいつまでも病気だ病気だと申して嫁を貰ってくれませんうちに、もしもの事があったら、草葉の陰で配偶に合わす顔がございません。まあどうして、あんなに聞き訳がないんでございましょう。何か云い出すと、阿母私はこんな身体で、とても家の面倒は見て行かれないから、藤尾に聟を貰って、阿母さんの世話をさせて下さい。私は財産なんか一銭も入らない。と、まあこうでござんすもの。私が本当の親なら、それじゃ御前の勝手におしと申す事も出来ますが、御存じの通りなさぬ中の間柄でございますから、そんな不義理な事は人様に対しても出来かねますし、じつに途方に暮れます」