夏目漱石 『虞美人草』 「御宅でも皆様御変りもなく……毎々欽吾や藤…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』

現代語化

「ご自宅の皆さんもご無事で……いつも欽吾と藤尾が遊びに行きまして、お世話になりっぱなしで……先日もまた素敵なものをいただきまして、すぐに御礼に伺らなければなりませんでしたが、ついつい忙しくて……」
「いやいや、取るに足らないものでして……いただいたものでしてね。アハハハハ、ようやく暖かくなりましたが」
「奥様の家の桜はいかがですか。今頃がちょうど満開でしょうか」
「今年は陽気のせいか、例年より少し早くて、4〜5日前がちょうど見頃だったんですが、一昨日の風でかなり散ってしまって、もう……」
「ダメですか。あの桜は珍しいですよね。なんていう桜でしたっけ。え?あさぎ桜。そうそう。あの色が珍しい」
「少し青みがかかっていて、なんだか、こう、夕方になると幻想的な感じになります」
「そうなんですか、アハハハハ。荒川には緋桜というのがあるんですが、あさぎ桜は珍しいですね」
「皆さんそうおっしゃいます。八重はたくさんありますが、青っぽいのは滅多にないですよね……」
「ないですよ。でも桜も好き好んでコレクションする人がいると、100種類以上あるそうですよ……」
「へえー、すごいですね」
「アハハハハ、桜でも侮れませんね。この間も一が京都から帰ってきて嵐山に行ったって言ってたので、どんな花だったのか聞いてみたら、ただ一重だっていうだけで、何も知らないんですよ。今時の若者は呑気なものですよ、アハハハハ。――どうですか、つまらないお菓子ですがひとつ召し上がってください。岐阜の柿羊羹です」
「いえ、どうぞ。もうお構いなく……」
「たいしたことありませんよ。珍しいだけです」

原文 (会話文抽出)

「御宅でも皆様御変りもなく……毎々欽吾や藤尾が出まして、御厄介にばかりなりまして……せんだってはまた結構なものをちょうだい致しまして、とうに御礼に上がらなければならないんでございますが、つい手前にかまけまして……」
「いや、詰らんもので……到来物でね。アハハハハようやく暖かになって」
「どうです御宅の桜は。今頃はちょうど盛でしょう」
「本年は陽気のせいか、例年より少し早目で、四五日前がちょうど観頃でございましたが、一昨日の風で、だいぶ傷められまして、もう……」
「駄目ですか。あの桜は珍らしい。何とか云いましたね。え? 浅葱桜。そうそう。あの色が珍らしい」
「少し青味を帯びて、何だか、こう、夕方などは凄いような心持が致します」
「そうですか、アハハハハ。荒川には緋桜と云うのがあるが、浅葱桜は珍らしい」
「みなさんがそうおっしゃいます。八重はたくさんあるが青いのは滅多にあるまいってね……」
「ないですよ。もっとも桜も好事家に云わせると百幾種とかあるそうだから……」
「へええ、まあ」
「アハハハ桜でも馬鹿には出来ない。この間も一が京都から帰って来て嵐山へ行ったと云うから、どんな花だと聞いて見たら、ただ一重だと云うだけでね、何にも知らない。今時のものは呑気なものでアハハハハ。――どうです粗菓だが一つ御撮みなさい。岐阜の柿羊羹」
「いえどうぞ。もう御構い下さいますな……」
「あんまり、旨いものじゃない。ただ珍らしいだけだ」


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