GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』
現代語化
「それは今でもいるよ。真面目な人間が世の中に少ないのと同様に、お坊さんにもあまり多くはないけど――でも全くいないわけじゃない。何しろ古いお寺だからね。あれは最初は一乗止観院って言って、延暦寺になったのはしばらく後のことらしいよ。その頃から変な修行があって、12年間山に閉じこもって出ないんだそうだ」
「蕎麦どころじゃないですね」
「どうして。何しろ一度も下界に降りないんだから」
「そうやって山の中で歳だけ重ねてどうするつもりかな」
「修行するんだよ。お前らもそんなに怠けずにそんな真似でもすればいいのに」
「それは無理ですよ」
「どうして」
「どうしてって。僕はできなくもないけど、そうしたらあなたの命令に背くことになるじゃないですか」
「命令に?」
「だって人の顔を見るたびに嫁をもらえ嫁をもらえって言うじゃないですか。これから12年も山に閉じこもったら、嫁をもらう頃には腰が曲がってますよ」
原文 (会話文抽出)
「あれでも昔しは真面目な坊主がいたものでしょうか」
「それは今でもあるよ。真面目なものが世の中に少ないごとく、僧侶にも多くはないが――しかし今だって全く無い事はない。何しろ古い寺だからね。あれは始めは一乗止観院と云って、延暦寺となったのはだいぶ後の事だ。その時分から妙な行があって、十二年間山へ籠り切りに籠るんだそうだがね」
「蕎麦どころじゃありませんね」
「どうして。――何しろ一度も下山しないんだから」
「そう山の中で年ばかり取ってどうする了見かな」
「修業するのさ。御前達もそうのらくらしないでちとそんな真似でもするがいい」
「そりゃ駄目ですよ」
「なぜ」
「なぜって。僕は出来ない事もないが、そうした日にゃ、あなたの命令に背く訳になりますからね」
「命令に?」
「だって人の顔を見るたんびに嫁を貰え嫁を貰えとおっしゃるじゃありませんか。これから十二年も山へ籠ったら、嫁を貰う時分にゃ腰が曲がっちまいます」