夏目漱石 『虞美人草』 「なるほど」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』

現代語化

「なるほど」
「なるほどだけか。お前は何見せても喜んでくれないよな」
「見せてもらえるものなんて、自分で作ったもんじゃあるまいし」
「そういう恩知らずは、よく哲学者にあるもんだ。親不孝な学問して、いつも人との付き合いを疎かにして……」
「本当にすみません。――親不孝な学問か、ハハハハハ。お前の白い帆が見える。あの島の青い山を背にして――全然動かないぜ。いつまで見てても動かないぜ」
「つまらん帆だな。曖昧なところがお前そっくりだ。でもきれいだ。おや、こっちにもあるぜ」
「あの、ずっと向こうの紫の岸の方にもある」
「うん、ある、ある。つまらないだらけだ。べた一面だ」
「まるで夢みたいだな」
「何が」
「何がって、目の前の景色がさ」
「うんそうか。俺はまたお前が何か思い出したのかと思った。物はさっさと片付けるに限るよ。夢みたいにぼんやりしてちゃだめだよ」
「何を言ってるんだい」
「俺の言うことも結局夢みたいか。アハハハハ。ところで将門が気<img gaiji="gaiji" src="../../../gaiji/1-87/1-87-64.png" alt="※(「陷のつくり+炎」
「全部向こう側だ。京都を見下ろしてるんだから。こっちじゃない。あいつ馬鹿だな」
「将門か。うん、気<img gaiji="gaiji" src="../../../gaiji/1-87/1-87-64.png" alt="※(「陷のつくり+炎」
「哲学者があんなこと吐くものか」
「本当の哲学者になると、頭でっかちになって、ただ考えるだけの人間になるんだよ。まるで達磨みたい」
「あの煙ってる島って何だろう」
「あの島か、やたらぼんやりしてるね。多分竹生島だろう」
「本当か」
「まあ、いい加減だよ。雅号なんて、中身がちゃんとしてりゃどうでもいい主義だ」
「そんな確かなものがあるわけないだろ、だから雅号が必要なんだ」
「人間万事夢のごとしだな。やれやれ」
「ただ死だけは本当なんだ」
「いやだぜ」
「死に直面しないと、人間の浮気心はなかなか止まらないものだ」
「止まらなくてもいいけど、直面するのは真っ平御免だ」
「御免だっていつか来るよ。来た時にああそうかって思い知るんだ」
「誰が」
「小賢しいのが好きな人間さ」

原文 (会話文抽出)

「なるほど」
「なるほどだけか。君は何を見せてやっても嬉しがらない男だね」
「見せてやるなんて、自分が作ったものじゃあるまいし」
「そう云う恩知らずは、得て哲学者にあるもんだ。親不孝な学問をして、日々人間と御無沙汰になって……」
「誠に済みません。――親不孝な学問か、ハハハハハ。君白い帆が見える。そら、あの島の青い山を背にして――まるで動かんぜ。いつまで見ていても動かんぜ」
「退屈な帆だな。判然しないところが君に似ていらあ。しかし奇麗だ。おや、こっちにもいるぜ」
「あの、ずっと向うの紫色の岸の方にもある」
「うん、ある、ある。退屈だらけだ。べた一面だ」
「まるで夢のようだ」
「何が」
「何がって、眼前の景色がさ」
「うんそうか。僕はまた君が何か思い出したのかと思った。ものは君、さっさと片付けるに限るね。夢のごとしだって懐手をしていちゃ、駄目だよ」
「何を云ってるんだい」
「おれの云う事もやっぱり夢のごとしか。アハハハハ時に将門が気<img gaiji="gaiji" src="../../../gaiji/1-87/1-87-64.png" alt="※(「陷のつくり+炎」
「何でも向う側だ。京都を瞰下したんだから。こっちじゃない。あいつも馬鹿だなあ」
「将門か。うん、気<img gaiji="gaiji" src="../../../gaiji/1-87/1-87-64.png" alt="※(「陷のつくり+炎」
「哲学者がそんなものを吐くものか」
「本当の哲学者になると、頭ばかりになって、ただ考えるだけか、まるで達磨だね」
「あの煙るような島は何だろう」
「あの島か、いやに縹緲としているね。おおかた竹生島だろう」
「本当かい」
「なあに、好い加減さ。雅号なんざ、どうだって、質さえたしかなら構わない主義だ」
「そんなたしかなものが世の中にあるものか、だから雅号が必要なんだ」
「人間万事夢のごとしか。やれやれ」
「ただ死と云う事だけが真だよ」
「いやだぜ」
「死に突き当らなくっちゃ、人間の浮気はなかなかやまないものだ」
「やまなくって好いから、突き当るのは真っ平御免だ」
「御免だって今に来る。来た時にああそうかと思い当るんだね」
「誰が」
「小刀細工の好な人間がさ」


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