GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』
現代語化
「まあ比叡山の中の區域だね。広い山の中に、あそこに1ヶ所、ここに1ヶ所と坊が集まってるから、まあこれを3つに分けて東塔とか西塔とか言うんだと思えば間違いはない」
「まあ、君、大学に、法、医、文とあるようなものだよ」
「まあ、そうだ」
「東は戦場に近ければ修羅、西は都に近ければ横川の奥ぞ住みよかりけるとかいう歌の通り、横川が一番静かで、学問するにもいいところになってる。――今話した相輪<img gaiji="gaiji" src="../../../gaiji/1-86/1-86-14.png" alt="※(「木+棠」
「どうりで知らないで通ったわけだな、君」
「そら謡曲の船弁慶にもあるだろう。――かように候うものは、西塔の傍に住居する武蔵坊弁慶にて候――弁慶は西塔におったんだ」
「弁慶は法学部にいたんだね。君なんかは横川の文学部組だね。――おじさん叡山の総長は誰ですか」
「総長とは」
「叡山の――つまり叡山を建てた人です」
「開基かい。開基は伝教大師だよ」
「あんなところに寺を建てたって、不便でしょうがない。そもそも昔の人は気まぐれだよな。ねえ甲野さん」
「伝教大師は御前、叡山のふもとで生まれた人だ」
「なるほどそう言われれば分かった。甲野さん分かったでしょ」
「何?」
「伝教大師御誕生地って棒杭が坂本に立ってたよ」
「あそこで生まれたんだ」
「うん、そうか、甲野さん君も気がついたでしょ」
「僕は気がつかなかった」
「マメに夢中だったからだよ」
「アハハハハ」
原文 (会話文抽出)
「御叔父さん、東塔とか西塔とか云うのは何の名ですか」
「やはり延暦寺の区域だね。広い山の中に、あすこに一と塊まり、ここに一と塊まりと坊が集まっているから、まあこれを三つに分けて東塔とか西塔とか云うのだと思えば間違はない」
「まあ、君、大学に、法、医、文とあるようなものだよ」
「まあ、そうだ」
「東は修羅、西は都に近ければ横川の奥ぞ住みよかりけると云う歌がある通り、横川が一番淋しい、学問でもするに好い所となっている。――今話した相輪<img gaiji="gaiji" src="../../../gaiji/1-86/1-86-14.png" alt="※(「木+棠」
「どうれで知らずに通った訳だな、君」
「そら謡曲の船弁慶にもあるだろう。――かように候ものは、西塔の傍に住居する武蔵坊弁慶にて候――弁慶は西塔におったのだ」
「弁慶は法科にいたんだね。君なんかは横川の文科組なんだ。――阿爺さん叡山の総長は誰ですか」
「総長とは」
「叡山の――つまり叡山を建てた男です」
「開基かい。開基は伝教大師さ」
「あんな所へ寺を建てたって、人泣かせだ、不便で仕方がありゃしない。全体昔しの男は酔興だよ。ねえ甲野さん」
「伝教大師は御前、叡山の麓で生れた人だ」
「なるほどそう云えば分った。甲野さん分ったろう」
「何が」
「伝教大師御誕生地と云う棒杭が坂本に建っていましたよ」
「あすこで生れたのさ」
「うん、そうか、甲野さん君も気が着いたろう」
「僕は気が着かなかった」
「豆に気を取られていたからさ」
「アハハハハ」