GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』
現代語化
「先日中は欽吾がまた、いろいろお世話になって、おかげでいろんなところを見物させていただきましたと言って大喜びしております。本当にあの通りわがまま者ですから、あなたもさぞお困りになったことでしょう」
「いえ、こちらではいろいろお世話になったそうで……」
「どういたしまして、人様のお世話などできるような男ではありませんので。あの歳になりまして、友人がたったの一人もいないそうですよ……」
「あまり学問をすると、誰彼かまわずむやみに付き合いができなくなりますよね。アハハハハ」
「私には女性なのでよく分かりませんが、なんだかいつも憂鬱そうにしているようで――あなたに連れ出していただかないと、誰も相手にしてくれないみたいで……」
「アハハハハ、一はまた正反対。誰とでも付き合います。家にいるといつも妹におちょくられて――いや、あれでも困ります」
「いえ、本当に明るくあっさりしていて、結構だと思います。せめて一の半分でも、欽吾がもっと面白ければいいのにと藤尾にもいつも言っているんです――それもこれもみんな彼の体のせいですから、今さら文句を言っても仕方がないとは思いますが、やはり自分の産んだ子ではないだけに、世間に対して心配になります……」
「ごもっともです」
原文 (会話文抽出)
「嵐山と云えば」
「せんだって中は欽吾がまた、いろいろ御厄介になりまして、御蔭様で方々見物させていただいたと申して大変喜んでおります。まことにあの通の我儘者でございますから一さんもさぞ御迷惑でございましたろう」
「いえ、一の方でいろいろ御世話になったそうで……」
「どう致しまして、人様の御世話などの出来るような男ではございませんので。あの年になりまして朋友と申すものがただの一人もございませんそうで……」
「あんまり学問をすると、そう誰でも彼でもむやみに附合が出来にくくなる。アハハハハ」
「私には女でいっこう分りませんが、何だか欝いでばかりいるようで――こちらの一さんにでも連れ出していただかないと、誰も相手にしてくれないようで……」
「アハハハハ一はまた正反対。誰でも相手にする。家にさえいるとあなた、妹にばかりからかって――いや、あれでも困る」
「いえ、誠に陽気で淡泊してて、結構でございますねえ。どうか一さんの半分でいいから、欽吾がもう少し面白くしてくれれば好いと藤尾にも不断申しているんでございますが――それもこれもみんな彼人の病気のせいだから、今さら愚癡をこぼしたって仕方がないとは思いますが、なまじい自分の腹を痛めた子でないだけに、世間へ対しても心配になりまして……」
「ごもっともで」