GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』
現代語化
「どうする気なのか、彼の気持ちは私も分からないよ」
「帰って来ても同じですよね」
「同じだよ。一生あれなんだよ」
「家を継ぐのがそんなに嫌なんでしょうか」
「ああ、口だけさ。それがいけないんだよ。あんなこと言って私たちを当てつけようとしてるんだから……本当に財産も何も入らないなら自分で何かしたらいいじゃない。毎日毎日ぐずぐずして、卒業してから今日までもう2年も経つのに。いくら哲学だって自分ぐらいなんとかなるでしょ。煮え切らないっちゃありゃしない。彼の顔を見るたびに私はイライラして……」
「遠回しに言っても全く伝わらないみたいですね」
「なんせ、伝わっても知らないふりしてるんだよ」
「腹立たしいわね」
「本当に。彼がどうにかしてくれないことには、あなたの方をどうすることもできないよ。……」
「あなたも今年で24じゃない?24になって結婚できないものなんて滅多にないでしょ。――それで、嫁にやろうかと相談したら、やめてくれって、私はお母さんの世話をするからって言うし、それなら独立できる仕事でもするかと思えば、毎日部屋に引きこもって寝転がってるだけだし。――それで他の人には財産を藤尾に譲って自分は放浪するつもりだなんて言うんだよ。まるで私たちが邪魔して追い出そうとしてるみたいで恥ずかしいじゃない」
「どこに行って、そんなことを言ったの?」
「宗近のおじいちゃんのところに行った時、そう言ったらしいよ」
「本当に男らしさの欠片もない性格ですね。それより早く糸子さんでももらったらいいのに」
「そもそももらう気があるのかな」
「兄さんの気持ちは全く分かりません。でも糸子さんは兄さんのところに行きたがってるんですよ」
原文 (会話文抽出)
「どうする気なんでしょう」
「どうする気か、彼人の料簡ばかりは御母さんにも分らないね」
「帰って来ても同じ事ですね」
「同じ事さ。生涯あれなんだよ」
「家を襲ぐのがあんなに厭なんでしょうか」
「なあに、口だけさ。それだから悪いんだよ。あんな事を云って私達に当付けるつもりなんだから……本当に財産も何も入らないなら自分で何かしたら、善いじゃないか。毎日毎日ぐずぐずして、卒業してから今日までもう二年にもなるのに。いくら哲学だって自分一人ぐらいどうにかなるにきまっていらあね。煮え切らないっちゃありゃしない。彼人の顔を見るたんびに阿母は疳癪が起ってね。……」
「遠廻しに云う事はちっとも通じないようね」
「なに、通じても、不知を切ってるんだよ」
「憎らしいわね」
「本当に。彼人がどうかしてくれないうちは、御前の方をどうにもする事が出来ない。……」
「御前も今年で二十四じゃないか。二十四になって片付かないものが滅多にあるものかね。――それを、嫁にやろうかと相談すれば、御廃しなさい、阿母さんの世話は藤尾にさせたいからと云うし、そんなら独立するだけの仕事でもするかと思えば、毎日部屋のなかへ閉じ籠って寝転んでるしさ。――そうして他人には財産を藤尾にやって自分は流浪するつもりだなんて云うんだよ。さもこっちが邪魔にして追い出しにでもかかってるようで見っともないじゃないか」
「どこへ行って、そんな事を云ったんです」
「宗近の阿爺の所へ行った時、そう云ったとさ」
「よっぽど男らしくない性質ですね。それより早く糸子さんでも貰ってしまったら好いでしょうに」
「全体貰う気があるのかね」
「兄さんの料簡はとても分りませんわ。しかし糸子さんは兄さんの所へ来たがってるんですよ」