夏目漱石 『虞美人草』 「実はそう云うしだいで突然参上致したので、…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』

現代語化

「実はそういうわけで、いきなりお伺いしたんです。お具合の悪いところをすみません」
「いえいえ、大変失礼しました。私こそ恐縮です。起きてご挨拶すべきところですが……」
「どういたしまして、このままの方が話がしやすくて、結局は私の都合が良いんです。ハハハハ」
「わざわざお越しくださって、本当にありがとうございます」
「昔のことですが、武士は情けをかけ合うべきだと思っています。ハハハハ私もいつお世話になるかわかりません。しかし、久しぶりで東京にお引っ越しになったので、さぞご不便でしょう」
「もう20年になります」
「20年目ですか。それはそれは。昔の人ですね。ご親類は?」
「ほとんどいません。長い間音信不通でしたので」
「なるほど。それじゃ小野さんだけが頼りですね。どうも申し訳ないことをしてしまいました」
「間抜けな真似をしてしまいました」
「いやしかし、どうにかなりましょう。そんなに心配しないでください」
「心配なんかしませんよ。間抜けな真ネをしただけのことです。先ほど娘にも原因を話して言い聞かせておきました」
「でも、これまで一生懸命ご面倒見てきたのに、そう簡単に諦めるのはもったいないので、ここはお任せください。息子もできるかぎり頑張りたいと言ってました」
「お気持ちは大変光栄です。ですが、向こうで断っているのですから、娘も結婚したいとは思わないでしょうし、結婚したいと思っても私が許しませんよ」
「少し冷静になってみてはどうでしょう。――小夜子さん、行かなくてもいいよ」

原文 (会話文抽出)

「実はそう云うしだいで突然参上致したので、御不快のところをはなはだ恐縮であるが、取り急ぐ事と、どうか悪しからず」
「いや、はなはだ失礼の体たらくで、私こそ恐縮で。起きて御挨拶を申し上げなければならんのだが……」
「どう致して、そのままの方が御話がしやすくて結句私の都合になります。ハハハハ」
「まことに御親切にわざわざ御尋ね下すってありがたい」
「なに、昔なら武士は相見互と云うところで。ハハハハ私などもいつ何時御世話にならんとも限らん。しかし久しぶりで東京へ御移ではさぞ御不自由で御困りだろう」
「二十年目になります」
「二十年目、そりゃあそりゃあ。二た昔ですな。御親類は」
「無いと同然で。久しい間、音信不通にしておったものですからな」
「なるほど。それじゃ、全く小野氏だけが御力ですな。そりゃ、どうも、怪しからん事になったもので」
「馬鹿を見ました」
「いやしかし、どうにか、なりましょう。そう御心配なさらずとも」
「心配は致しません。ただ馬鹿を見ただけで、先刻よく娘にも因果を含めて申し聞かしておきました」
「しかしせっかくこれまで御丹精になったものを、そう思い切りよく御断念になるのも惜いから、どうかここはひとまず私共に御任せ下さい。忰も出来るだけ骨を折って見たいと申しておりましたから」
「御好意は実に辱ない。しかし先方で断わる以上は、娘も参りたくもなかろうし、参ると申しても私がやれんような始末で……」
「冷やすのは少し休めて見よう。――なあ小夜子行かんでも好いな」


青空文庫現代語化 Home リスト