夏目漱石 『虞美人草』 「いっそ、ここで、判然断わろう」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』

現代語化

「いっそのこと、ここでっきり断わっちゃえば?」
「断わるって、約束でもあるんですか」
「約束?約束はないよ。でもおじいちゃんが、あの金時計を一にやるとおっしゃったんだ」
「それが、どうしたんです」
「あなたが、あの時計をオモチャにして、赤い玉ばっかりいじってたことがあったでしょ……」
「それで」
「それでね――この時計と藤尾とは縁の深い時計だがこれをあなたにやろう。でも今はやらない。卒業したらやる。でも藤尾が欲しがってついてくるかもしれないけど、それでもいいか?って、冗談半分にみんなの前で一に言ったんだよ」
「それを今だに真に受けてるんですか」
「宗近のおじいちゃんの口ぶりじゃどうもそうらしいよ」
「バカバカしい」
「バカバカしいんだよ」
「あの時計は私がもらいますよ」
「まだあなたの部屋にあるの?」
「文机の中に、ちゃんとしまってます」
「そう。そんなに欲しいの?だってあなたには持てないでしょ」
「いいからください」

原文 (会話文抽出)

「いっそ、ここで、判然断わろう」
「断わるって、約束でもあるんですか」
「約束? 約束はありません。けれども阿爺が、あの金時計を一にやると御言いのだよ」
「それが、どうしたんです」
「御前が、あの時計を玩具にして、赤い珠ばかり、いじっていた事があるもんだから……」
「それで」
「それでね――この時計と藤尾とは縁の深い時計だがこれを御前にやろう。しかし今はやらない。卒業したらやる。しかし藤尾が欲しがって繰っ着いて行くかも知れないが、それでも好いかって、冗談半分に皆の前で一におっしゃったんだよ」
「それを今だに謎だと思ってるんですか」
「宗近の阿爺の口占ではどうもそうらしいよ」
「馬鹿らしい」
「馬鹿らしいのさ」
「あの時計は私が貰いますよ」
「まだ御前の部屋にあるかい」
「文庫のなかに、ちゃんとしまってあります」
「そう。そんなに欲しいのかい。だって御前には持てないじゃないか」
「いいから下さい」


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