夏目漱石 『虞美人草』 「散歩ですか」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』

現代語化

「散歩?」
「うん。今、そこの角で電車降りたばっか。だから、どっでもいいよ」
「俺はちょっと急ぎだから……」
「俺も大丈夫。ちょっとお前の行く方角に一緒に急ごう。――そのゴミ箱出せ。持ってくよ」
「いや、いいよ。ダサい」
「まあ、出せよ。なるほどデカいのに軽いな。ダサいのはお前のほうだ」
「そんな風に持つと軽そうに見えるな」
「モノは持ち方次第さ。ハハハ。これどこで買ったの?結構ちゃんとできてるね。ゴミ箱にするのはもったいない」
「だから、街中でも持って歩けるんだ。ホントのゴミ入ってたら……」
「なんであかんねん。電車なんて人ばっかり詰め込んで街中堂々と走ってるやん」
「ハハハ、じゃあお前はゴミ箱の運転手ってこと?」
「お前がゴミ箱の社長で、頼まれてる奴は株主か。そんなゴミ入れられへん」
「古紙とかそういうのはどう?」
「それいらん。お金がたくさん入ってればいい」
「ただの紙入れといて催眠術かけてもらったほうが早そう」
「せやな。人間が先にゴミになるんやろ。隗より始めよやな。人間のゴミは催眠術かけなくてもいっぱいおる。なんでこう隗よりせんねん」
「なかなか隗よりせんわ。人間のゴミが勝手にゴミ箱に飛び込んできてくれたらええのに」
「自動ゴミ箱発明したら?そしたら人間のゴミがみんな自分から飛び込んでくるやろ」
「それで特許でも取ったら?」
「アハハハ、ええな。知り合いでゴミ箱に飛び込ませたい奴おる?」
「おるかもしれん」
「ところで、昨日は変な奴とイルミネーション見に行ったんやろ?」
「おう、お前らも行ったんやろ?」

原文 (会話文抽出)

「散歩ですか」
「うん。今、その角で電車を下りたばかりだ。だから、どっちへ行ってもいい」
「僕は少し急ぐから……」
「僕も急いで差支ない。少し君の歩く方角へ急いでいっしょに行こう。――その紙屑籠を出せ。持ってやるから」
「なにいいです。見っともない」
「まあ、出しなさい。なるほど嵩張る割に軽いもんだね。見っともないと云うのは小野さんの事だ」
「そう云う風に提げるとさも軽そうだ」
「物は提げ様一つさ。ハハハハ。こりゃ勧工場で買ったのかい。だいぶ精巧なものだね。紙屑を入れるのはもったいない」
「だから、まあ往来を持って歩けるんだ。本当の紙屑が這入っていちゃ……」
「なに持って歩けるよ。電車は人屑をいっぱい詰めて威張って往来を歩いてるじゃないか」
「ハハハハすると君は屑籠の運転手と云う事になる」
「君が屑籠の社長で、頼んだ男は株主か。滅多な屑は入れられない」
「歌反古とか、五車反古と云うようなものを入れちゃ、どうです」
「そんなものは要らない。紙幣の反古をたくさん入れて貰いたい」
「ただの反古を入れて置いて、催眠術を掛けて貰う方が早そうだ」
「まず人間の方で先に反古になる訳だな。乞う隗より始めよか。人間の反古なら催眠術を掛けなくてもたくさんいる。なぜこう隗より始めたがるのかな」
「なかなか隗より始めたがらないですよ。人間の反故が自分で屑籠の中へ這入ってくれると都合がいいんだけれども」
「自働屑籠を発明したら好かろう。そうしたら人間の反故がみんな自分で飛び込むだろう」
「一つ専売でも取るか」
「アハハハハ好かろう。知ったもののうちで飛び込ましたい人間でもあるかね」
「あるかも知れません」
「時に君は昨夕妙な伴とイルミネーションを見に行ったね」
「ええ、君らも行ったそうですね」


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