夏目漱石 『行人』 [Gemini]
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夏目漱石 『行人』
「なぜあいつに対して、そう改まってるんです…
「岡田君はいつもこうやって晩酌をやるんです…
「おい」…
「先ほどお出かけになった後で」…
「ええちょっと見ました」…
「二郎さんあなた仕度は好いんですか」…
「物好」…
「どっちも酔ってるんだよ。小僧の癖に」…
「佐野さんはあの写真によく似ている」…
「何がそんなに気になるんです」…
「お宅じゃ早くお貞さんを片づけたいんでしょ…
「まだ容易に旅行などはできないでしょうか」…
「御病人の御様子はどうです」…
「君に才覚ができるのかい」…
「僕の都合で帰ろうと思えばいつでも帰るさ」…
「どうも強情な男だな、他が親切に云ってやれ…
「きっとあれだ。今に看護婦に名前を聞かして…
「あの女」…
「どうだかね。ああ嘔くようじゃ」…
「君はあの女を見舞ってやったのか」…
「静かにして、刺戟のないようにしてやらなく…
「三沢はああ云ってるが、僕のいないとき、あ…
「海岸へいっしょに行くつもりででもあったの…
「もう退院は勧めない」…
「じゃただ用心のために持って行こうと云うん…
「この御暑いのによくまあ」…
「ではどうぞちょっと御改ためなすって」…
「おれも食いたいな」…
「宅のものがその娘さんの精神に異状があると…
「さあ一口ずつ皆などうぞ」…
「大坂城の石垣の石は実に大きかった」…
「どこでも構わないが、それだけじゃないはず…
「これじゃ」…
「おめでた過ぎるくらい事件がどんどん進行し…
「厭だねそんな俥に乗るのは、可哀想で」…
「そんな女のためにお金を使う訳がないじゃな…
「お待遠」…
「もう済んだんですか」…
「姉さん、姉さん」…
「あなたに話がある」…
「その話ならおれも聞いて知っている。三沢が…
「兄さんには何か意見が有るんですか」…
「おれはどうしてもこう思うんだがね……」…
「二郎、御前見たいに暮して行けたら、世間に…
「二郎どこへ行くんだい」…
「どこへ行けるんでしょう」…
「牢屋見たいだな」…
「おい少し話しがあるんだと云ったじゃないか…
「嫂さんがどうかしたんですか」…
「二郎」…
「兄さん、今日は頭がどうかしているんですよ…
「御前メレジスという人を知ってるか」…
「ここは往に通らなかったかな」…
「まあどこまで行ったの」…
「二郎実は頼みがあるんだが」…
「二郎おれは御前を信用している。御前の潔白…
「姉さんの節操を試すなんて、――そんな事は…
「厭かい」…
「兄さん」…
「直御前二郎に和歌山へ連れて行って貰うはず…
「二郎、今になって違約して貰っちゃおれが困…
「じゃ僕らもそろそろ出かけましょうかね」…
「何を考えていらっしゃるの」…
「何でそんなに雨が気になるの。降れば後が涼…
「用があるなら早くおっしゃいな」…
「姉さんはいくつでしたっけね」…
「だってそりゃ無理よ二郎さん。妾馬鹿で気が…
「あなた何の必要があってそんな事を聞くの。…
「ぐるぐる回りゃそれでたくさんだ。その上海…
「おい電話はどうしても通じないんだね」…
「姉さん」…
「姉さん何かしているんですか」…
「姉さんいつ御粧したんです」…
「姉さんまだ寝ないんですか」…
「何かの本にでも出て来そうな死方ですね」…
「二郎さん」…
「ただいま」…
「もうもう和歌の浦も御免。海も御免。慾も得…
「兄さんは昨夕僕らが帰らないんで、機嫌でも…
「今云おうと思ってるところです。しかし事が…
「おい二郎」…
「兄さんは」…
「今から荷造りですか。ちっと早過ぎるな」…
「二郎兄さんの機嫌はどうだったい」…
「御母さんこっちは雨なんか這入りゃしません…
「お重お前のようなものがよくあの芳江を預か…
「まだ怒ってるのかい」…
「芳江さんは御母さん子ね。なぜ御父さんの側…
「おやどこへか行ったかな」…
「兄さんは子供をあやす事を知らないから」…
「二郎おれは昔から自然が好きだが、つまり人…
「だって余まりじゃありませんか、お貞さんが…
「兄さん」…
「二郎ちょうど好いところへ帰って来ておくれ…
「どうか拝聴を……」…
「その人は何て答えました」…
「馬鹿正直なだけに熱心な男だもんだから、と…
「どうも御親切に……」…
「その時わしは閉口しながらも、ああ景清を女…
「本当に盲目ほど気の毒なものはございません…
「幸い相手の眼が見えないので、自分の周章さ…
「しかし女というものはとにかく執念深いもの…
「そりゃひどい。僕はとにかく、お父さんまで…
「二郎」…
「早く出て上げて下さい。その代り妾もどんな…
「二郎たとい、お前が家を出たってね……」…
「永々御厄介になりましたが……」…
「二郎さん、あなた下宿なさるんですってね。…
「兄さんは」…
「一本八銭だ。ずいぶん悪い煙草だろう」…
「ちっと旅行でもなすったらどうです。少しは…
「二郎、なぜ肝心な夫の名を世間が忘れてパオ…
「君の兄さんは近頃どうだね」…
「時に君の兄さんだがね」…
「なぜそんなら始めから僕にやろうと云わない…
「もっともこの間少し風邪を引いた時、妙な囈…
「おい二郎」…
「もっとも一郎さんも善くないと僕は思います…
「これ卵甲よ。本当の鼈甲じゃないんだって。…
「あのお貞さんは手へも白粉を塗けたのよ」…
「じゃはなはだ御迷惑だけど、一郎さんとお直…
「兄さんはどうだい」…
「何だい、突立ったまま」…
「本当に忙がしいのです。実はこの間から少し…
「御前は二郎かい」…
「この棒ひとり動かず、さわれば動く」…
「何かあるんですよ今日は。おおかた貸し切り…
「用があるのかい」…
「御母さんは驚いているよ。御彼岸に御萩を持…
「ハイカラじゃないか」…
「つまり兄さんが家のものとあんまり口を利か…
「お重、今兄さんはここを抓ったが、お前の腕…
「どうも旨く行かないそうだ」…
「君の未来の細君はやっぱりああいう顔立なん…
「とうとう役者になったんだそうだ」…
「もう一人の女」…
「兄の事も今日君に会ったらよく聞こうと思っ…
「実は父や母が心配して、できるなら旅行中の…
「あすこへ大きな蟇が出るんですよ」…
「兄さんは今朝お立ちよ。お父さんがあなたへ…
「御父さんは?」…
「兄さんはそれでもよく思い切って旅に出かけ…
「御客さまだと思うなら、そんな大きなお尻を…
「だって御前は今兄さんの秘密だと明言したじ…
「御母さん、兄さんは妾達に隠れてこの間見合…
「すべての人の運命なら、君一人そう恐ろしが…
「昨夕も寝られないで困った」…
「そうだろう、今の君はそうよりほかに答えら…
「なぜ山の方へ歩いて行かない」…
「自分を生活の心棒と思わないで、綺麗に投げ…
「世の中の事が自分の思うようにばかりならな…
「何をするんだ」…
「君、僕を単に口舌の人と軽蔑してくれるな」…
「好いな」…
「絶対に所有していたのだろう」…
「君は結婚前の女と、結婚後の女と同じ女だと…
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