夏目漱石 『行人』 「実は父や母が心配して、できるなら旅行中の…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『行人』

現代語化

「親父とオカンが心配しててさ、旅行中はずっと状況報告してほしいんだって……」
「心配すんなよ。大丈夫だって。俺が引き受けるから」
「でも年寄りだからさ……」
「困るなぁ。だから年寄りは苦手なんだよ。家に帰って『大丈夫だから』って伝えといて」
「何かいい方法はないかな。あんたに迷惑かけず、親父とオカンを安心させるような」
「そんな都合のいい方法があるわけないよ。でも、頼まれたことだし、こうしよう。旅先でニュースになるようなことがあったら、手紙を送る。届かなかったら、いつも通りで安心していてくれって」
「それでいいです。でも、ニュースって緊急事態じゃなくてさ、兄ちゃんの普段の感情や考えで、ちょっと変わったところがあったら教えてほしいんですけど」
「面倒くさい話だな。まぁ、わかったよ」
「あと、俺やオカン、家庭のこととか兄ちゃんが話したら、遠慮せず全部教えてほしいんですけど」
「うん、特に問題なければ報告するよ」
「問題あっても教えてほしい。親父とオカンが困るからさ」

原文 (会話文抽出)

「実は父や母が心配して、できるなら旅行中の模様を、経過の一段落ごとに承知したいと云うんですが……」
「君そんなに心配する事はありませんよ。大丈夫だよ、僕が受け合うよ」
「しかし年寄ですから……」
「困るね、それじゃ。だから年寄は嫌いなんだ。宅へ行ってそう云いたまえな、大丈夫だって」
「何とか好い工夫はないもんでしょうか。あなたの御迷惑にならないで、そうして、父や母を満足させるような」
「そんな重宝な工夫があるものかね、君。――しかしせっかくの御依頼だからこうしよう。もし旅先で報道するに足るような事が起ったら、君の所へ手紙を上げると。もし手紙が行かなかったら、平生の通りだと思って安心していると。それでよかろう」
「それで結構です。しかし出来事という意味を俗にいう不慮の出来事と取らずに、あなたが御観察になる兄の感情なり思想のうちで、これは尋常でないと御気づきになったものに応用していただけましょうか」
「なかなか面倒だね、事が。しかしまあいいや、そうしてもいい」
「それからことによると、僕の事だの母の事だの、家庭の事などが兄の口に上るかも知れませんが、それを御遠慮なく一々聞かしていただきたいと思いますが」
「うん、そりゃ差支えない限り知らせて上げましょう」
「差支えがあっても構わないから聞かしていただきたい。それでないと宅のものが困りますから」


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