夏目漱石 『行人』 「二郎、なぜ肝心な夫の名を世間が忘れてパオ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『行人』

現代語化

「二郎、なんで夫の名前は忘れられて、パオロとフランチェスカだけが残ってんのかな。わかる?」
「やっぱ、三勝半七みたいなんでしょ」
「俺はこう思うんだ」
「俺はこう思う。人間が作った夫婦って関係よりも、自然な恋愛の方が、実際、神聖なんだ。だから時が経つにつれて、狭い社会の作った窮屈なルールが捨てられて、自然の法則を称える声だけが、俺たちの耳に残るんじゃないかな。もちろん、当時の人たちはみんなルールに従って、二人の関係を不倫だと責めた。でもそれは、その瞬間を治めるための道徳で、あとに残るのはやっぱり青空と太陽、つまりパオロとフランチェスカなんだ。どう思う?」

原文 (会話文抽出)

「二郎、なぜ肝心な夫の名を世間が忘れてパオロとフランチェスカだけ覚えているのか。その訳を知ってるか」
「やっぱり三勝半七見たようなものでしょう」
「おれはこう解釈する」
「おれはこう解釈する。人間の作った夫婦という関係よりも、自然が醸した恋愛の方が、実際神聖だから、それで時を経るに従がって、狭い社会の作った窮屈な道徳を脱ぎ棄てて、大きな自然の法則を嘆美する声だけが、我々の耳を刺戟するように残るのではなかろうか。もっともその当時はみんな道徳に加勢する。二人のような関係を不義だと云って咎める。しかしそれはその事情の起った瞬間を治めるための道義に駆られた云わば通り雨のようなもので、あとへ残るのはどうしても青天と白日、すなわちパオロとフランチェスカさ。どうだそうは思わんかね」


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