夏目漱石 『行人』 「二郎ちょうど好いところへ帰って来ておくれ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『行人』

現代語化

「おっ、二郎。ちょうどいいところに帰ってきやがったな。「中入ってオヤジの歌とか聞いてろ」
「何すんの?」
「知らねえけど、早く来いよ。みんな待ってんだから」
「なあ……」
「なんでそんな暗いとこで一人ぼっちで突っ立ってんのよ」
「なんでもいいよ」
「さっきから、何回も出てこいってうるさいのよ。だから、オカンに断ってちょっと具合悪いことにしてあるの」
「なんでまた今日に限って、そんなに遠慮すんのよ」
「だって、アホらしくって。和尚とか叩くのもうイヤになっちゃったんだもん。それに、これからやるのって難しくてできないよ」
「立派じゃねえか。お前らみたいな女でも、謙遜ってもんが少しはわかってるんだな」

原文 (会話文抽出)

「二郎ちょうど好いところへ帰って来ておくれだ。奥へ行って御父さんの謡を聞いていらっしゃい」
「何をやるんです」
「何だか知らないがね。早くいらっしゃいよ。皆さんが待っていらっしゃるんだから」
「おい……」
「なぜそんな暗い所に一人で立っているんだい」
「なぜでも」
「先刻から、何遍も出て来い出て来いって催促するのよ。だから御母さんに断って、少し加減が悪い事にしてあるのよ」
「なぜまた今日に限って、そんなに遠慮するんだい」
「だって妾鼓なんか打つのはもう厭になっちまったんですもの、馬鹿らしくって。それにこれからやるのなんかむずかしくってとてもできないんですもの」
「感心にお前みたような女でも謙遜の道は少々心得ているから偉いね」


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