GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夏目漱石 『行人』
現代語化
「俺がうまくできないのは子供だけじゃないよ」
「俺は自分の子供をうまくあやすことができないだけでなく、自分の父や母でさえうまくあやす手段を持っていない。それどころか肝心の自分の妻さえどうしたらうまくあやせるのか今でもわからないんだ。この年になるまで勉強してきたおかげで、そんな手段を覚える暇がなかった。二郎、ある手段というのは、人生を幸せにするために、どうしても必要みたいだね」
「でも立派な講義さえできれば、それですべてを償って余りあるからいいでしょう」
「俺は講義を作るためだけに生まれてきた人間じゃない。でも講義を作ったり本を読んだりする必要のために肝心の人間らしい気持ちを人間らしく満足させることができないようになってしまったんだ。あるいは相手が満足させてくれなくなったのかもしれない」
原文 (会話文抽出)
「兄さんは子供をあやす事を知らないから」
「おれの綾成す事のできないのは子供ばかりじゃないよ」
「おれは自分の子供を綾成す事ができないばかりじゃない。自分の父や母でさえ綾成す技巧を持っていない。それどころか肝心のわが妻さえどうしたら綾成せるかいまだに分別がつかないんだ。この年になるまで学問をした御蔭で、そんな技巧は覚える余暇がなかった。二郎、ある技巧は、人生を幸福にするために、どうしても必要と見えるね」
「でも立派な講義さえできりゃ、それですべてを償って余あるから好いでさあ」
「おれは講義を作るためばかりに生れた人間じゃない。しかし講義を作ったり書物を読んだりする必要があるために肝心の人間らしい心持を人間らしく満足させる事ができなくなってしまったのだ。でなければ先方で満足させてくれる事ができなくなったのだ」