夏目漱石 『行人』 「その人は何て答えました」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『行人』

現代語化

「そいつは何て言ったの」
「二郎が絶対になんとか聞き出すだろうと思ったんだ。二郎って面白いよな。世の中ってほんとに変な奴いっぱいいるんだぜ」
「へえ」
「実は俺も聞いたんだ、そいつに。お前に何て答えたかって。そしたら坊ちゃんってやつがさ、こう言ったんだ。「俺は自分の年も先の年も知ってた。でも俺が卒業したら女がいくつになるかってとこまでは考えてられなかった。ましてや俺が50になればそいつも50になるとか、そんな遠い未来は全然頭になかった」って」
「無邪気ですねえ」
「完全に無邪気なんだよ」
「なるほど、若いってそういうもんなんですね」
「で、一週間もしないうちにそいつが後悔し始めてさ、女は平気だったんだけど、そいつが自分で気まずくなっちゃってさ。坊ちゃんだけに意気地がねえんだ。でも正直もんだったから、結局その女にちゃんと結婚破棄を申し込んで、しかもめっちゃ気まずそうな顔して、「ゴメンな……」とか言って謝ったらしいんだぜ。そこへ行くと女も同い年だったから、「ゴメンな」なんて子供っぽい言葉を聞くと可愛くも見えるだろうし、バカバカしくも見えるだろうよ」

原文 (会話文抽出)

「その人は何て答えました」
「二郎がきっと何とか聞くだろうと思った。二郎面白いだろう。世間にはずいぶんいろいろな人があるもんだよ」
「へえ」
「実はわしも聞いて見た、その男に。君何て答えたかって。すると坊ちゃんだね、こう云うんだ。僕は自分の年も先の年も知っていた。けれども僕が卒業したら女がいくつになるか、そこまでは考えていられなかった。いわんや僕が五十になれば先も五十になるなんて遠い未来は全く頭の中に浮かんで来なかったって」
「無邪気なものですね」
「全くのところ無邪気だ」
「なるほど若いものになるといかにも一図ですな」
「ところが一週間経つか経たないうちにそいつが後悔し始めてね、なに女は平気なんだが、そいつが自分で恐縮してしまったのさ。坊ちゃんだけに意気地のない事ったら。しかし正直ものだからとうとう女に対してまともに結婚破約を申し込んで、しかもきまりの悪そうな顔をして、御免よとか何とか云って謝罪まったんだってね。そこへ行くとおない年だって先は女だもの、『御免よ』なんて子供らしい言葉を聞けば可愛いくもなるだろうが、また馬鹿馬鹿しくもなるだろうよ」


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