夏目漱石 『行人』 「すべての人の運命なら、君一人そう恐ろしが…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夏目漱石 『行人』

現代語化

「全員の運命なんだから、お前だけビビる必要ないじゃん」
「必要なくても、実際そうなんだから」
「人類全体何百年もかけて辿り着く運命を、俺一人で一生のうちに経験しなきゃいけないんだぜ。一生かけてならまだしも、10年でも1年でも、もっと短縮して1か月とか1週間でも、同じ運命をたどらなきゃいけないのがヤバイ。お前にゃ嘘だと思うかもしれんが、俺の生活のどんな一瞬を切り取ってみても、たとえそれが1時間だろうが30分だろうが、全部同じ運命をたどってるから怖いんだよ。つまり俺って、人類全部の不安を一人に集めて、それをさらに短時間で一気に煮詰めたヤバイ奴なんだ」
「それはダメだ。もっと気楽に考えなきゃ」
「ダメだっていうのは自分でもわかってるよ」

原文 (会話文抽出)

「すべての人の運命なら、君一人そう恐ろしがる必要がない」
「必要がなくても事実がある」
「人間全体が幾世紀かの後に到着すべき運命を、僕は僕一人で僕一代のうちに経過しなければならないから恐ろしい。一代のうちならまだしもだが、十年間でも、一年間でも、縮めて云えば一カ月間乃至一週間でも、依然として同じ運命を経過しなければならないから恐ろしい。君は嘘かと思うかも知れないが、僕の生活のどこをどんな断片に切って見ても、たといその断片の長さが一時間だろうと三十分だろうと、それがきっと同じ運命を経過しつつあるから恐ろしい。要するに僕は人間全体の不安を、自分一人に集めて、そのまた不安を、一刻一分の短時間に煮つめた恐ろしさを経験している」
「それはいけない。もっと気を楽にしなくっちゃ」
「いけないぐらいは自分にも好く解っている」


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